欲とカネの板挟み

[ 2012年3月1日 06:00 ]

 CS「チャンネル銀河」という局でNHKの古いドラマを再放送している。最近は朝4時などという時間に鈴木京香(真知子)倉田てつを(春樹)の「君の名は」をやっている。91年放送分だ。トウカイテイオーの年じゃないか、古いなあ。当時は一年通しだったらしく、まあ逢えそうで逢えず、結ばれそうで結ばれず「ええ加減にせえよ」と吐き捨てながら見ている。▼ジャーナリストを目指す春樹が欧州特派員の要請を得たとき、真知子の離婚がやっと成立しそうになる。「春樹さんのチャンスを潰すようなことになったら私生きていけない」と、ここでも真知子が分かった風な事を言い「春樹は愛と仕事の板挟みであった」と八千草薫の語りが入ってその回が終わる。▼「愛と仕事の板挟み」クッソー、なってみたいわ、そんな板挟み。しかしここでも大事なのは単語だ。これが「春樹は性欲とカネの板挟みであった(これは“愛と仕事”と同義語だ)」だと「やらせてほしいけど真知子さん、一回いくら?高いよねえ?」と財布を覗く図になる。これじゃいけない。▼水曜朝3時、カメラ・バッテリーも充電し、週刊競馬ブックもリュックに入れる。「眠たいけど、ジョワド撮りに行かないと」と起き上がって外見ると大変な雨だ。傘差すと怒られるからカッパなんだけど、カッパ着ると横・後ろがよく見えない。振り向いた途端、馬の巨大なケツが現れ、シッポがシュルシュル上がり、馬糞が落ち、そのハネをまともに浴びた暗い過去が蘇る。「やめよ、来週、来週」と布団をかぶる。「栄一は馬糞とカッパの板挟みであった」と八千草薫のナレーションが聞こえてきた。▼弥生賞はラジN杯1番人気に支持された芦毛トリップの逆襲差しを狙う。(作家)

続きを表示

2012年3月1日のニュース