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話題のシャオミSU7に北京で試乗!ガジェット屋が作ったBEVの走りはどうか?

[ 2024年5月6日 10:00 ]

話題沸騰のシャオミSU7 どんなクルマか?

シャオミ初の自動車「SU7」もちろん、純電動車だ。価格はSU7:215900RMB SU7 Pro:245900RMB SU7 Max:299900RMB 1人民元=21円換算で、約453万円、約516万円、約630万円

シャオミ初の自動車「SU7」は純電動4ドアセダン、そのスタイリングは昨今の流行りであるファストバック風セダンとなる。スマートフォンの機種名のように名付けられたラインアップは、「ベースグレード」「Pro」「Max」の3グレードで構成される。ベースとProは出力295 hp(220 kW)の後輪駆動、Maxは出力663 hp(495 kW)の四輪駆動となる。加速性能は後輪駆動モデルで0-100 km/h 5.28秒、四輪駆動モデルで0-100 km/h 2.78秒と公表されている。また、バッテリーはベースとProどちらともリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池を採用するが、前者がBYDグループ会社「フィンドリームズ(弗迪)」の「ブレードバッテリー」、後者が「CATL(寧徳時代)」の「神行電池」を搭載している。最上級のMaxには255 Wh/kgの密度を誇るCATLの「麒麟電池」を採用、15分で510 km走行分を充電可能だ。航続距離はそれぞれのグレードで700 km、830 km、800 kmを誇るものの、数値自体は中国独自のCLTC方式で測定されているために実航続距離はその7割くらいであろう。

全長×全幅×全高:4997mm×1963mm×1455mm
ホイールベース:3000mm
キャプション入力欄
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実際に乗り込むと、シンプルなエクステリアとは裏腹に、インテリアは意外とスポーティな雰囲気だ。ハンドルはしっかりとグリップ性に優れ、中央部から生え出ているダイヤルスイッチは左側がACC、右側がドライブモード選択と20秒間だけ動作する「ブーストモード」の操作を担当する。

電源ボタンを押せばハンドル奥の7.1インチディスプレイが回転し、車両の始動を告げる。16.1インチのセンターディスプレイは中国車における近年の流行りを感じさせるが、シャオミはディスプレイに電磁石で接続できる物理ボタンをオプションとして販売している。これによりエアコンの細かい設定やメディアの音量、再生/一時停止が物理的フィードバックをもって操作可能となる。

センターディスプレイは16.1インチ。インテリアの質感は高い。
シャオミはディスプレイに電磁石で接続できる物理ボタンをオプションとして販売している。

しっかりした脚周り

ドライブモードは「爽」「新手」「COMFORT」「SPORT」「SPORT+」の5つから選択可能だ。最初に乗り込んだ際は「COMFORT」からだったが、加速の感覚はマイルドで砂利道を走っても路面の凹凸をサスペンションが上手に吸収してくれる。この瞬間、筆者のSU7に対する印象が変わった。クルマを作ったことのないシャオミの電気自動車なんて、正直に言えばアピールポイントは加速力と他のシャオミ製品との連携ぐらいしかないと勝手に思っていた。乗り味や操安性など中国メーカーのクルマは軽視されがちだし、このSU7も例に漏れずきっとそうだと思っていた。

ダイヤルスイッチは左側がACC、右側がドライブモード選択と20秒間だけ動作する「ブーストモード」の操作用

まずは「COMFORT」で感じた足回りの優秀さに驚かされ、次は「SPORT」を試してみる。すると、舗装路では吸い付くように走ってくれ、なおかつ電子的な加速音もスポーティな気分を演出してくれる。中国の中途半端なBEVが設けるスポーツモードは加減速の制御が下手なために酔いやすいが、意外にもSU7では「SPORT」でも不快な気分にさせない。コーナリングではメルセデスAMG車種に採用されている「ドライビングダイナミックシート」のように、シートサイドがGに合わせて自動で膨らんでドライバーの姿勢を保ってくれる。時速120km/hでの直進安定性は状態のひどい舗装路でも抜群で、もっとスピードを出しても良いと思えるほどだった。

リヤには電動スポイラーが付く

駆動モーターはシャオミ自社開発「HyperEngine」、現在は最高回転数2万1000 rpmの「V6」「V6s」のみが量産されている。2万7200 rpm・569 hp(425 kW)・635 Nmの「V8s」は2025年中の市場投入を予定しており、さらにはカーボンスリーブローターを採用する3万5000 rpmのモータも研究開発中とのこと。

SU7 Maxが搭載する自動化運転技術はLiDAR x 1、ミリ波レーダー x 3、高精細カメラ x 11、超音波レーダー x 12のハードウェア、そして計算能力508 TOPSのNVIDIA Orinチップセット2枚によって支えられている。高速道路でのハンズオフ運転から自動駐車、駐車スペースからドライバーがいる位置まで自動で動く「自動召喚」などの機能に対応する一方、レベル3の自動運転に達していないのは多くの自動車メーカーと同じだ。シャオミの雷軍CEOによれば、自動運転領域には33億元(約720億円)以上の開発費を投じており、これまでに1000万km以上のテスト走行を行なったとのこと。自動運転のR&Dチームは2024年の終わりまでに1500人規模へと増員する計画で、ガジェット屋の底力には注目が集まる。

一方で改善すべき点があるのも確かだ。そのひとつがブレーキ性能で、シャオミはフロントにブレンボ製キャリパーを採用しているとアピールするものの、SU7の持つ加速力には到底見合わない4potキャリパーなのだ。実際に高い速度からのフルブレーキングを何度か試したが、ズルズルと滑りながら止まるような感覚には恐怖さえも覚えた。シャオミがライバルとしてたびたび引き合いに出すポルシェ・タイカンのターボSはフロント10-pot・リヤ4-pot、またブレーキローターもホイールのギリギリまで拡大している。SU7ではもう少し大きいローターやキャリパー、パッドなどへの改良を期待したい。

Xiaomi SU7 Maxは、わずか15分の充電で510kmという驚異的な航続距離を実現する。ベースグレードのなシャオミSU7でも、同じ時間枠で350キロの航続距離延長を実現している。

4月29日にはローンチから32日で1万台目のSU7が工場よりラインオフしたと盛大に発表した。4月単体で7058台がデリバリーされ、現在納車待ちの注文数は約8万8000件にのぼるとのこと。現在は納車まで8カ月待ちとしているが、シャオミはサプライヤーへ月産1万台の供給体制に適応するように指示しており、納車待ち時間の短縮に期待が集まる。年間15万台の生産能力を有している工場は2025年に終わる拡張工事で年間30万台へ増強される計画だ。SUVモデルや低価格モデルの投入も2025年を予定しており、シャオミによる自動車業界への侵攻はますます加速することとなる。

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2024年5月6日のニュース