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山根会長辞任 告発側の“奈良判定”動かぬ証拠についにドン観念

[ 2018年8月9日 05:30 ]

関係者とみられる女性(右)に口元を押さえられながら自宅へ戻る日本ボクシング連盟の山根会長=8日午後、大阪市
Photo By 共同

 日本ボクシング連盟の不正疑惑で、助成金の流用や過去の暴力団組長との関係が批判を受けている山根明会長(78)が8日、大阪市内で辞任を表明した。同日、同会長を告発した「日本ボクシングを再興する会」は都内で会見し、不正判定の存在を示す音声データ2件を公表。動かぬ証拠を事前にちらつかせていたことが辞任へ追い込む形となった。再興する会は山根会長の除名や理事らの解任を決議する臨時総会の招集を請求した。

 自身を「男・山根明」「カリスマ」と表現してきた山根会長が、辞任を余儀なくされた。告発状に記された12項目の疑惑のほとんどを否定してきた山根会長だが、さすがに観念するしかなかった証拠を突き付けられた。

 再興する会が会見で公表したのは、16年2月5日、午後4時55分に録音された音声データ。同会長が奈良県連盟会長だったことから、同県出身選手に有利な判定をする、いわゆる「奈良判定」の存在を自ら認めるものだ。

 「接戦した場合、やっぱり奈良やな。それ、反対につけた場合は“おまえなめてるんか?”てなってくるわけ」

 録音された16年2月の時点では、審判員への直接的な指示は否定しているものの、不正判定の教唆や自身への忖度(そんたく)をほのめかしていたことになる。さらに音声の冒頭部分で「俺はあれやで、審判のミーティングの時にな?最近は言わないけど、奈良の選手を勝たせとか言わない」と発言。「最近」と言っていることから、16年以前はより具体的に、不正判定を指示していたことになる。

 発言時の状況や会話の相手は、情報提供者保護の観点から公にはされなかったが、告発者の一人で96年アトランタ五輪ウエルター級代表の仁多見史隆氏は「日本連盟は否定しているが、組織的に不正を行っていた」と語気を強めた。

 再興する会は、チーム経費や五輪慰労金などの新たな金銭不正、国際ボクシング協会(AIBA)が認めていない国際審判員資格を有する人物の連盟理事就任など、新たに2つの疑惑も発表した。山根会長の辞任表明についても、再興する会代表の鶴木良夫氏は「辞任の意味合いが曖昧。これでは前に進まない。体制そのものを変えることが目的なので院政を敷かれては意味がない」と話した。

 告発状を関係各所に提出した時点では333人が告発人として名を連ねたが、問題が明らかになるにつれ、賛同者や新たな疑惑情報が寄せられているという。宮崎県連盟副会長の菊池浩吉氏も「(山根氏の辞任発表は)私たちが挙げた項目について発言がなく逃げた印象」と糾弾した。辞任表明では幕引きさせない。再興する会は、山根一派の完全排除へ山根会長の除名を求めた。

 ▽奈良判定 山根氏が奈良県連盟元会長だったことから、11年に日本連盟の会長に就任後、奈良県の選手に有利な判定を下させていたとされる問題。奈良県の選手が試合をする場合、すでに決まっていた審判を山根氏の指示で交代させ同県の選手を勝たせるようにしていた。相手選手を勝たせた場合、山根氏が厳しく叱責(しっせき)したり、その後の大会に招へいされなかったりした。16年のいわて国体成年男子バンタム級1回戦は、奈良県選手から2度ダウンを奪った岩手県選手が判定負け、疑惑の象徴として取り上げられた。

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