村田 NHKクロ現で語る「情熱冷めてない」「火に油注がれた」
20日のボクシングWBA世界ミドル級王座決定戦で不可解な1―2の判定負けを喫した村田諒太(31=帝拳)が、30日放送のNHK総合「クローズアップ現代+」(火曜後10・00)に緊急出演。初挑戦となった世界戦を振り返り、今後についての自身の思いを打ち明けた。
五輪金メダリストとして日本人初の世界王者を目指した村田。前に出て相手にプレッシャーを与える自らのスタイルを貫き、世界ランキング1位のアッサン・エンダム(33=フランス)を最後まで追い詰めた戦いは、日本だけでなく世界中のボクシングファンから賞賛された。判定を疑問視したWBAは、エンダムを支持したジャッジ2人の6カ月の資格停止処分を発表し、再戦を指令するほどだった。
試合後の心境について、武田真一キャスターが村田に聞いた。
――試合の判定について。
「“村田かわいそうだな”という雰囲気もあるが、僕が考えていた最悪の結果は『変な判定で勝つこと』だった。最悪の結果を招いたかというと、そうではないという感じです」
――試合を終えての感想は?
「試合に対する率直な意見は、サポートしてくれた人々に対して(判定負けという結果になり)残念だなと。悔しかったが、自分の可能性をもっと信じられるようになりました」
――(試合のVTRを2人で見ながら)第1ラウンドは繰り出したパンチは数回だった。
「作戦です。エンダムが直近の試合で1ラウンド22秒でKOしていたので、エンダムのパンチの角度を見ることが最重要課題でした」
――第3ラウンド。ラウンド途中に笑顔を見せた?
「笑っていますね。“このぐらいのパンチだったら防げちゃうよ”と見せたくて笑ったのかもしれない」
――第4ラウンド。会心の右ストレートでダウンを奪う。
「ワンツー、ワンツーのタイミングで打っていたが、ワンを省いて打った。ひらめきのようなものです。ガードが下がったから狙ったわけじゃない。たまたまです。カウンターとは(相手の動きを)読み切って打つものだと思っていたが、結果としてカウンターになるようなものだなと思いました」
――その後は相手を再三追い詰めるも、2度目のダウンを奪えない。
「試合中に思ったのは、僕自身12ラウンドをやったことがなかった。世界戦で11、12ラウンドのことをチャンピオンズラウンドと言うのですが、いまそのラウンドをやっている。やっていて楽しかったです」
――そして、試合は判定負け。どんな心境だった?
「自分としては相手にダメージも与えたし、ポイントも取れたかなと思ったのが正直な感想です。ですが、変な判定で勝ちを奪われて村田は憔悴しているだろうと想像されるもしれないが、そうではないです」
――やりきったという感覚?
「やりきったというより、自分に対する半信半疑だったんです。プロの世界の一流とやったときにどこまで通用するのだろうという気持ちがあった。やってみて通用するところがあると分かったし、こう改善すれば自分自身もっとよくなるんだなと分かった。伸びしろのある自分の可能性を発見できたという気持ちが強かったです」
――今後については?
「現役続行するかどうかはチームの判断が必要で、何とも言えないのですが、個人的なボクシングへの情熱はまったく冷めることなく、むしろ火に油を注がれたような感じです。初めてプロの仕事ができたような感覚でした。プロとは何かというと、人に必要とされることであって、多くの人に楽しんでもらえたと思いますので個人的な情熱は冷めていません」