世界戦ラッシュの中、注目すべき東洋太平洋Sフェザー級王座戦
年末恒例のボクシング興業のカードが次々と発表されている。世界タイトルマッチは最大9試合が計画されている上に会場も東京、岐阜、京都と分かれ、録画映像を含めて全試合を見るだけでも大変だ。テレビ局の意向ではあるが、もうちょっと日程をばらけさせることはできないものか。一度に多く開催すると、その日のメインイベント以外の試合が大きな記事になるのは難しい。選手にとっては世界戦の会場のリングに立てるというメリットはあるものの、せっかく年末に試合をしても話題にならず、注目されないのでは気の毒だ。
世界戦の中に埋没しそうな、注目のカードが1つある。東洋太平洋スーパーフェザー級王者・伊藤雅雪(伴流)とWBOアジアパシフィック同級王者・渡辺卓也(青木)による“統一戦”だ。12月19日の開催案もあったが、大みそかに大田区総合体育館で行われる内山高志(ワタナベ)と田口良一(同)の世界戦のアンダーカードに収まった。WBO(世界ボクシング機構)の地域タイトルであるWBOアジアパシフィックは9月から日本国内でのタイトル戦開催が始まったものの、日本ボクシングコミッション(JBC)は様子見で非公認という状態。JBC的には東洋太平洋王座の防衛戦だが、事実上の統一戦というわけだ。
東洋太平洋王座を2度防衛している伊藤は21戦19勝(9KO)1敗1分けで、WBO4位など3団体で世界ランク入り。今回は防衛戦の相手がなかなか決まらないところへ渡辺との統一戦が浮上したそうで「圧倒して世界へ行きたい」と意気込む。一方、9月に王座決定戦を制してWBOアジアパシフィック王座を獲得した渡辺は37戦30勝(16KO)6敗1分け。WBO7位にランクされ、「これから世界を目指す相手に勝って自分が上へ行く」と頼もしい。勝者が世界挑戦に近づく一戦とも言える。もっとも、現WBO王者はあのロマチェンコ(ウクライナ)なのだが…。
東日本ボクシング協会で国際部長を務める三迫ジムの三迫貴志会長は言う。「今のボクシング界はタイトルよりも、誰とやったか、が重要。WBOアジアパシフィック王座も、こういう好カードを生むために活用していけばいい」。内山と三浦隆司(帝拳)の元世界王者2人は別格として、スーパーフェザー級は伊藤と渡辺以外にも日本王者・尾川堅一(同)、12月3日に尾川に挑む前王者・内藤律樹(E&Jカシアス)、内山から世界戦でダウンを奪った金子大樹(横浜光)ら国内に好選手が多い。これらの選手が直接戦った上で勝ち残った選手が世界へ行く、というのなら健全な流れで、その戦いにはタイトルの名称はあまり関係ない。世界戦ラッシュの中で話題になりにくいが、結果が興味深いカードだ。(中出 健太郎)
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