【浜田剛史の目】悔やまれるクアドラス陣営の“計算違い”
WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦 ○挑戦者ローマン・ゴンサレス 判定3―0 王者クアドラス●
(9月10日 米カリフォルニア州イングルウッド ザ・フォーラム)
勝負のポイントは5、6ラウンドにあった。それまでは下がりながらパンチを出していたクアドラスが、前傾姿勢で打ち合いに出たのだ。これが“打ち疲れ”と“打たれ疲れ”の出ていたゴンサレスに効いた。ゴンサレスは軽いパンチから連打で倒すが、序盤から手数を出しながらも、最も威力のある返しのパンチが当たっていなかった。一方、一発の強さなら自身より上で、従来の相手とは違うパンチ力にダメージも受けていた。
相手が疲れの色を見せたことでリードしていると思ったのか、クアドラスは9回から足を使って逃げ切り態勢に入った。だが、狙いどおりできたことが採点に直結するわけではない。ラウンドごとを見ても、最初の2分間は四苦八苦しながらもゴンサレスが攻め、最後の1分でクアドラスがパンチを当てて良い印象を与えていたが、全体ではヒット数の多いゴンサレスにポイントがいく。クアドラス陣営の計算違いが悔やまれる。
井上尚弥がゴンサレスと対戦するなら拳のケガなどの問題を克服した上で、もう少し実力を伸ばさないといけない。攻撃に関しては良いものを持っているが、これまでとは違うパンチ力を持つ相手と打ち合うために、耐久力や体の強さがもっと必要だ。(元WBC世界スーパーライト級王者)
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