村田諒太 世界挑戦への道を着々「重圧に負けたらボクサーとして面白くない」
WBA世界スーパーフェザー級王座を11度防衛した内山高志(ワタナベ)がまさかの2回KO負けを喫してから3週間。日本ボクシング界はいまだに“内山ショック”から抜け出せていないように見える。「まさか」「ボクシングは怖い」「ショックだった」――。エースの敗戦に国内有力選手が口をそろえる中、ミドル級で世界挑戦を視野に入れる村田諒太(帝拳)の視点がやや異なることに興味を引かれた。
「技術的にはガードは大事だなと思った」。自身への戒めとする一方、「自分が影響を受けるのはミドル級の試合。階級が違うとリアリティーがない。実はみんなそうだと思う」と話した。村田いわく「ラリーが続く女子バレーは打ち合う軽量級。一発で終わる男子バレーは重量級と一緒」。ミドル級は怖さのレベルが格段に違う。だからこそ不用意に一発をもらわないようガードを固めることを意識し、4回TKO勝ちでプロ10連勝を飾った14日の香港での試合でも徹底していた。
香港での村田は良かった。左ジャブは相手がのけぞるほど鋭く、辛口の帝拳ジム・本田明彦会長も「ブロッキングとプレッシャー、ジャブだけで、ほとんどの試合でポイントが取れる」と褒めたほどだ。右ストレートを被弾しないよう左へ逃げ続ける相手を、3回以降は左から攻めて攻略する対応力も披露。次戦が7月23日のラスベガスに内定している難しい状況でも落ち着いていた。「プレッシャーは自分の心がつくりだす幻影でしかない。そんなものに負けていたらボクサーとして男として、面白くない」。ここに来て戦うスタイルも、余計なことを頭から排除できる精神面も、世界初挑戦へ着々と進歩しているように感じる。
ミドル級は今、最も世界挑戦が難しい階級だ。WBC正規王者サウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)が18日に王座を返上し、暫定王者から正規王者に昇格したゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)がWBA・WBC・IBFの3団体王座を統一した(WBAはスーパー王者)。現在はカネロとゴロフキンの対戦交渉が優先され、挑戦できるのはWBA正規王者ダニエル・ジェイコブス(米国)かWBO王者ビリー・ジョー・サンダース(英国)の2人だけ。カネロとの交渉が不調に終わった場合、ゴロフキンはサンダース相手に4団体王座統一を狙う可能性もあり、村田が世界戦線へ割り込むのは非常に苦しい。
しかし、ここに来て村田をプロモートする米トップランク社のボブ・アラムCEOが注目発言を行った。米ボクシング専門サイトに「村田は7月23日にラスベガスでコマンチェ・キッド(対戦相手ジョージ・タドニパーの愛称)と対戦し、年末には日本で戦う。その後にサンダースへ挑戦させたい」とターゲットを具体的に挙げたのだ。本田会長も「やるならサンダースしかない」と話し、「ロンドン五輪金メダリストの肩書きが役立つかも」と英国での知名度が対戦実現を後押しすることを期待する。実現は来年になりそうだが、ファンにとって楽しみが1つ増えたことは確かだ。(記者コラム・中出 健太郎)
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