山中 KO宣言あえて“封印”V9へ難敵モレノの防御を警戒
WBC世界バンタム級タイトルマッチ 王者・山中慎介―同級2位アンセルモ・モレノ
(9月22日 東京・大田区総合体育館)
ボクシング世界戦の前日計量が都内で行われ、9度目の防衛戦に臨む王者・山中慎介(帝拳)はリミットの53・5キロ、挑戦者アンセルモ・モレノ(パナマ)は53・0キロで一発パスした。山中はWBA王座を12度防衛した難敵の卓越した防御によって攻撃が空回りすることを警戒し、あえて恒例のKO宣言を封印した。
揺るぎない自信があっても、威勢のいい言葉は口にしない。計量を終えた山中は、相好を崩してモレノと握手した。控室で特製すっぽんスープをゴクゴク。レストランで牛ステーキとパスタをパクリ。
「最高の調整ができた。(互いに)闘志むき出しというタイプじゃない。試合当日、スイッチを入れればいい」。物腰は穏やかでも、エネルギーは100%だ。
王者の世界戦KO率は77・7%。痛快なノックアウトシーンこそ魅力なのだが、今回の相手は難敵だ。前スーパー王者モレノの武器は世界でも一級品の防御。通算39戦でKO負けはなく「神の目」と自負するディフェンスで攻撃をヒラリヒラリとかわし、自分のペースに持ち込む“アリ地獄殺法”により世界のトップで戦ってきた。
過去最強というより、過去最高のテクニシャンである挑戦者。それだけに「KO、KOと言うとパフォーマンスに影響する」と恒例のKO宣言を封印した。
「基本線はジャブと足を使ったボクシング」。帝拳ジムの本田明彦会長はこの軸を攻撃の中心に置きながらも「駄目な場合は早めに切り替える」と数パターンの攻撃を準備したことを明かした。「難しい戦いになるが、必ず自分が勝つ」。KOの2文字を胸にしまってまで勝利にこだわった“神の左”を持つ男。バンタム級頂上決戦にケリをつける。