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井岡が世界最速「3階級獲ったぞ!」 一族の悲願成就に涙…

[ 2015年4月23日 05:30 ]

判定勝ちで3階級制覇を達成し、一法会長(左)と叔父の弘樹氏(右)に担ぎあげられて笑顔の井岡一翔

WBA世界フライ級タイトルマッチ12回戦 ○同級3位・井岡一翔 判定 王者・フアンカルロス・レベコ●

(4月22日 大阪府立体育会館)
 WBA世界フライ級タイトルマッチで、挑戦者の井岡一翔(26=井岡)は8度防衛していた王者のフアンカルロス・レベコ(31=アルゼンチン)を2―0の判定で下し、3階級制覇に成功した。プロ18戦目での3階級制覇はジェフ・フェネック(オーストラリア)の20戦目を抜く史上最速記録で、日本人では亀田興毅に続いて2人目。叔父の弘樹氏(元世界2階級王者)が成し遂げられなかった井岡家の悲願を成就させた。

 歓喜の涙が止まらない。快挙を達成したリング上で父・一法さん(ジム会長)の左腕、叔父・弘樹氏の右腕に担ぎ上げられた一翔は「やったぞ!」と雄叫びを上げた。3人とも頬が濡れていた。

 勝利インタビューは「3階級獲ったぞ!」の絶叫でスタート。「崖っ縁というか正念場だった。井岡家に生まれ、ボクシングを始めてサラブレッドと言われたけど。去年5月に負けてから積み上げたものが音を立てて崩れ、本当の地方馬になった」。苦境を笑いで振り返りながら「自分がつかみたいものは何が何でも、真っすぐに挑戦していく」と心意気を語った。

 極度の緊張を強いられた。王者は遠い距離からでも飛び込んで手数をまとめる。細かいフェイントを入れながら左ジャブで距離を保つも「一瞬たりとも気が抜けなかった」。2回は王者の右ストレートを避けて左フックをブロック、逆に強烈な左フックでロープへのけぞらせた。8回にいきなりの右も鮮やかにヒット。「全ラウンドで集中してペースを握れた。(終わった瞬間に)勝ちを確信した」。1人がドローで2―0の判定だったものの、自身の感触通りにジャッジの支持を得た。

 丸1年をかけ、この日に備えた。昨年5月のプロ初黒星後はWBA王座に照準を合わせた。同9月の再起戦で下したカリージョは小柄で左右を振り回すタフな“仮想レベコ”だ。今年3月の3階級再挑戦発表後は、そのカリージョをスパーリングパートナーに招いた。興国高時代からの練習仲間の元WBA世界ミニマム級王者の宮崎亮の手も借りた。「相手はチャンピオンで強いのは当然。でも自分も準備してきた」。4月にジムでレベコの映像が流れることはなかった。全てを脳裏に焼き付けた。

 プロ転向後は国内最速(当時)の7戦目で世界王座を獲得、11戦目で2階級制覇。その日の出の勢いを失ったのは昨年5月。今春26歳となり、現役の残り時間も数えた。「これが最後の一戦という気持ちでいた」。自らにプレッシャーをかけながら結果を出した。

 挫折を乗り越え「自分の居場所」と信じる世界王座に返り咲いた。ミニマム級に続く複数団体王座統一、以前は語らなかった海外進出の夢も抱く。つかの間は悲願成就の喜びに浸り、すぐに新たな歴史を紡ぐ戦いに打って出る。

 ▼レベコ―井岡戦VTR 井岡が冷静に自分の距離を保って判定勝ちにつなげた。レベコはジャブ、フックと左のパンチを繰り出したものの大振りで、井岡はそこを突いて左のジャブやボディーを確実に当てた。8回にはカウンター気味の右が入り、9回にも相手の顎を捉えるなど後半はポイントでやや上回り、2―0の判定で王者を下した。

 ◆井岡 一翔(いおか・かずと)1989年(平元)3月24日、堺市出身の26歳。興国高で高校6冠。09年4月にプロデビュー。11年2月にWBC世界ミニマム級王者となり当時国内最速のプロ7戦目で世界王座を獲得。12年6月に日本人初の複数団体統一王者となる。同年12月にWBAライトフライ級王者となり2階級制覇。1メートル65。右ボクサーファイター。

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