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袴田事件の再審決定 死刑停止、釈放 静岡地裁「無罪の可能性」

[ 2014年3月27日 10:23 ]

袴田事件で再審を認める決定が出され、喜びを語る袴田巌元被告の姉秀子さん
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 1966年6月に静岡県清水市(現静岡市清水区)で一家4人を殺害したとして、80年に死刑が確定した元プロボクサー袴田巌死刑囚(78)の第2次再審請求審で、静岡地裁は27日、裁判のやり直しを決定するとともに、死刑の執行を停止、袴田さんの釈放を認めた。

 袴田さんは同日、東京拘置所(東京都葛飾区)から釈放された。静岡県警に逮捕されて以来、48年近く身柄拘束されていた。法務省によると、再審開始決定が出たことで死刑囚の拘置が停止され釈放されるのは初めて。

 検察側は地裁に職権で拘置の停止決定を取り消すよう求めたが、退けられた。東京高裁にも同様の抗告をしているが、袴田さんの身柄を拘束する法的根拠がないため、釈放する手続きを取った。

 村山浩昭裁判長は、再審開始の決定理由で、DNA鑑定の結果から、犯人の着衣とされた「5点の衣類」が「袴田さんのものでも犯行着衣でもない」と認定。捜査機関が証拠を捏造した疑いがあるとした。事件直後に袴田さんを目撃したとする証言など新証拠と旧証拠を総合的に判断し、無罪の可能性が高いと指摘した。弁護団の主張を全面的に認めた。
 拘置停止理由は「捏造の疑いがある証拠で有罪とされ、長期間死刑の恐怖の下で拘束された。拘置は耐え難いほど正義に反する」とした。

 弁護団の西嶋勝彦弁護団長は「決定を高く評価する」と述べた。検察側は「再審開始決定の取り消しを求めて即時抗告を検討する」としている。31日までに即時抗告すれば、再審開始をめぐる審理は東京高裁に移る。県警は「コメントは控えたい」としている。

 袴田さんは27日午後5時20分ごろ、姉の秀子さん(81)と一緒に車で東京拘置所を後にした。支援者は静岡市内などで袴田さんが入る医療施設の選定作業を開始。袴田さんの体調は悪くないというが、28日に都内の病院に入院する予定。袴田さんは拘置所で再審開始決定を伝えられると「そんなのはうそだ」と言って信じようとはしなかった。

 袴田さんは初公判から無罪を主張。再審開始決定を受けた確定死刑囚は6人目。第7次請求審の名古屋高裁決定が取り消された名張毒ぶどう酒事件の奥西勝死刑囚(88)以外は無罪が確定した。

 事件は66年6月30日未明に発生。みそ製造会社の専務宅が全焼し、焼け跡から一家4人の刺殺体が見つかった。住み込み従業員だった袴田さんは同年8月に強盗殺人などの疑いで逮捕された。

 5点の衣類は事件から1年2カ月後に勤務先のみそタンクの中から見つかった。白いシャツの右肩部分にB型の血液が付着しており、同じところをけがしていた袴田さんのものとされていた。

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2014年3月27日のニュース