阪神に欠かせないどん底を味わった移籍男

[ 2008年5月13日 08:27 ]

代名詞のヘッドスライディングをみせる平野。いつでも全力プレーが身上だ

 身長は169センチ。野球選手としては小さな体で、チームに絶妙なスパイスを効かせている。昨オフのトレードでオリックスから阪神に加わった29歳の平野恵一選手だ。登録は外野手だが、内外野ともこなす。開幕から「2番・二塁手」の定位置を確保し、状況に応じた打撃や華麗な守備が光っている。

 新天地でのスタートは出遅れた。沖縄・宜野座キャンプの序盤で左太もも裏を痛めてリタイア。約1カ月間は別メニューの調整が続いたが、じっくりと焦らずに治した。
 どんな時でも全力プレーがモットーだ。「自分らしさを忘れず、一生懸命プレーするスタンスは変わらない」と言う。そのガッツがあだとなったこともあった。
 2年前の5月6日のロッテ戦。強風で有名な千葉マリンスタジアムで、ファウルボールを追ってフェンスに顔面から激突した。体のあちこちを痛め、歩行すらままならない。それでもリハビリの一環で右打ちに取り組むなど、前向きな姿勢で苦境を乗り切った。
 愛妻からは「死ななくて良かった」と言われたほどの大けがだった。満足にプレーできない間は「いつやめてもいいのよ」とも。だが今回、人気球団へのトレードが決まると「阪神で娘のために頑張って」と変わったと苦笑いする。家族が大きな支えだ。
 キャンプ中には「日常生活に支障はないが、プレー中に自分の思うように力が入らないことがある」と話した。それでも徹底的な体のケアを行うなどして、今はそんなそぶりはまったく見せない。一時はどん底を味わった男が、好調な阪神に欠かせない選手となっている。

 ◆平野 恵一(ひらの・けいいち)神奈川・桐蔭学園高から東海大を経て02年に自由枠でオリックス入り。内外野をこなすユーティリティープレーヤーで、05年に球宴に初出場。06年5月にはファウルボールを追ってフェンスに激突して大けがを負った。07年オフにトレードで阪神に移籍し、今季は二塁の定位置を獲得。169センチ、65キロ。右投げ左打ち。29歳。神奈川県出身。

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2008年5月13日のニュース