杞憂でした

[ 2017年4月11日 10:30 ]

ブルーノ・セナ(左)とニコラ・プロスト (AP)
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 【我満晴朗のこう見えても新人類】「セナ・プロ」と聞くと、今でも果敢に反応してしまう。アイルトン・セナ(ブラジル)とアラン・プロスト(フランス)。因縁の二人だった。

 1988年にF1マクラーレン・ホンダでコンビを組んだ当初こそ関係は良好だったが(にこやかに握手するCMがあったっけ)、結局のところ両雄は並び立たなかった。鈴鹿サーキットで開催された89年の日本GPでは、プロストがセナに接触して年間王者を決めるという前代未聞の結末。この瞬間、プレスルームが凍り付いたかのように静まり返ったのを今でも覚えている。

 翌90年の日本グランプリでは、今度はセナがプロストに仕掛けるように激突し、結果として自身のチャンピオンが確定している。なんたる復しゅう劇か。言葉を交わすどころか視線すら合わせないライバル関係。サーキット上の熱き冷戦。

 その「セナ・プロ」が、今年からチームメートになる。熱心なファンならすでにご存じのことと思う。4月16日開幕の世界耐久選手権(WEC)に参戦するレベリオン・レーシング(スイス)が発表した今年のドライバーに、ニコラ・プロスト(35)とブルーノ・セナ(33)の名があった。ニコラはアランの息子、ブルーノはアイルトンのおい。レベリオン・オレカ07LMP2の31号車で、同じステアリングを握る。

 だっ…大丈夫なのか、ご両人。「先代」を取材したオッサン記者は気になって仕方ない。そんな中、4月4日付のレキップ電子版(フランス)に2人のインタビュー記事を発見した。

 「両家についての話題はいつも出てくるけど、僕とニコラの間には僕ら自身の関係を築いているところだ」(ブルーノ)

 「同じチームの同じクルマに乗るのだからいい関係でいられるはず。父の件は、もう過去の話さ」(ニコラ)

 なあんだ。なんだかいい感じ。実はこの二人、結構仲がいい。英国で一緒にテレビ出演した際には空港からレンタカーに同乗してロケ現場に向かったエピソードも紹介されている。モータースポーツファンとおぼしき係員は「セナ・プロ」が同じクルマに乗り込むのを目の当たりにし、ぼうぜん自失だったとか。

 ちなみにレベリオンの13号車をドライブするのはネルソン・ピケJr(31)。父ピケはロータスF1時代、中嶋悟の同僚だ。ついでに言うと中嶋の長男・一貴(32)もトヨタTS050ハイブリッド8号車でWECを戦う。2世が多い世界とはいえ、なんとも心躍るラインアップではないか。

 セナ。プロスト。ピケ。ナカジマ。

 そういえばフジテレビがF1中継を開始し、鈴鹿で日本GPが始まった87年から、今年でちょうど30年だ。(専門委員)

 ◆我満 晴朗(がまん・はるお)1962年、東京都生まれ。ジョン・ボンジョビと同い年。64年東京五輪は全く記憶にない。スポニチでは運動部などで夏冬の五輪競技を中心に広く浅く取材し、現在は文化社会部でレジャー面などを担当。たまに将棋の王将戦にも出没し「何の専門ですか?」と尋ねられて答えに窮する。愛車はジオス・コンパクトプロとピナレロ・クアトロ。

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2017年4月11日のニュース