琢磨 米インディ転身4年目で快挙!日本人初V

[ 2013年4月23日 06:00 ]

自動車レースのインディカー・シリーズ第3戦で日本人初優勝を果たし、日の丸を掲げて喜ぶ佐藤琢磨

インディカー・シリーズ第3戦

(4月21日 米カリフォルニア州ロングビーチ)
 米国伝統のレースで琢磨が歴史を変えた。市街地コース(1周=3・1665キロ)で80周の決勝が行われ、元F1ドライバーの佐藤琢磨(36=A・J・フォイト)が日本人ドライバー初優勝を果たした。これまでは昨年の佐藤と08年の武藤英紀の2位が日本勢最高だった。F1時代に果たせなかった優勝を、フォーミュラカーの2大カテゴリーとされるインディカー・シリーズでは参戦4年目にして成し遂げた。

 カリフォルニアの青空に向かって、コックピットから両腕を突き上げた。参戦52戦目で訪れた歓喜。トップでチェッカーフラッグを受けた佐藤は喜びを爆発させた。日本人初の快挙を成し遂げた36歳は「全てがかみ合った。夢のようでした」と興奮した口調でまくし立てた。

 予選は4番手だった。スタート直後に3番手に浮上。23周目に昨年度王者のライアン・ハンターレイを抜いて2番手に上がった。28周目のピットイン作業は完璧。一方、トップを走っていたダリオ・フランキッティが次の周でピットインし、作業に手間取った。佐藤は31周目でトップに浮上。「ハードタイヤからスタートした戦略もうまくいき、スタート、ピットストップも完璧に決まった」。ミスのない走りで最後まで首位を守り切った。

 「ここまで何度も優勝や表彰台がスルスルと手元から離れてしまうことがあったが、ようやくチャンスや環境が全てそろって勝つことができた」。昨年5月のインディ500(インディアナポリス)では、2位で迎えた最終ラップで首位のフランキッティに勝負を挑んだ結果スピンして、外壁に激突して17位。苦い経験をバネにした。

 「ノーアタック、ノーチャンス」が信念だ。東京・和光高時代には自ら自転車部を立ち上げ、総体を制した。少年時代からカートに親しむ選手が多い中19歳で早大を中退し、憧れのモータースポーツの世界に飛び込んだ。着実にステップアップして02年に25歳でF1デビュー。04年米国GP(インディアナポリス)では日本勢最高タイの3位にもなった。

 だが、08年に所属していたスーパーアグリ・ホンダが資金難のためシーズン途中で撤退。その後F1復帰はかなわず、10年から新天地に活路を求めた。1年目は最高9位と苦戦。それでも前向きな姿勢を失わなかった。昨季は3位、2位と最高位を更新。今季は名ドライバーのA・J・フォイトが率いる強豪チームに自身3度目の移籍。諦めず挑んでつかんだ栄冠に「震災の影響が残っている日本に、いいニュースになってくれるといい」と東日本大震災の被災地を思いやった。

 総合優勝争いで首位と6点差の2位につけた。次に狙うのは昨年あと一歩で届かなかった伝統のインディ500制覇。「これでチームに勢いがつくし、これからも頑張っていきたい」。日本のモータースポーツ史を塗り替えてきた男の挑戦はまだまだ続く。

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