意識を変え、運命を変えた村田諒太 対するブラント陣営にあった“計算違い”
村田諒太(33=帝拳)がWBA世界ミドル級王座に返り咲いた。昨年10月の敗戦から9カ月、前回の対戦では完敗したロブ・ブラント(28=米国)に2回TKO勝ちと、別人のような戦いぶりだった。村田自身が“変化”を求めていたのは確かだが、世界の頂点を極めたトップアスリートがこれほどまでに劇的にスタイルを変えることが可能なのだろうか?
どうやって変えたのか?
なぜ変われたのか? 一夜明け会見での村田の言葉に答えの一部が隠されていた。
「試合に向けての練習期間からコーヒーを飲んでないんです。練習の時にテンションをMAXにしたいのでカフェインを摂らないようにしていたんです。なので、パンとコーヒーを。パンを食べながらゆっくりコーヒーを飲むということを3、4カ月してなかったので、それをしたいですね」
今、何をしたいか?と問われた時の村田の回答なのだが、これを聞いた時、頭に浮かんだのはプロ野球の名将、野村克也氏の「意識が変われば…運命が変わる」の名言だった。ヒンズー教の教えをアレンジした「意識が変われば行動が変わる 行動が変われば習慣が変わる 習慣が変われば人格が変わる 人格が変われば運命が変わる」という、あの名言である。
いわゆる願掛け的な「コーヒー断ち」とではない。コーヒーに含まれるカフェインには興奮作用があり、午前中にコーヒーを摂取することで変にテンションが上がることを避けることが狙い。それなりに科学的根拠はあるのだが、それが午後の練習にどれだけ影響するかと言えば、実際のところは分からない。だが、村田はコーヒーを断った。どんなに些細なことであっても不安材料となるものは排除する。そんな強い決意というか、覚悟のような思いが読み取れた。それほどブラントとの再戦に懸けていた。当然、練習に取り組む姿勢も集中度も違っていただろう。まさに意識が行動を変え、習慣を変え、そして運命も変えたと言えるのではないだろうか。
一つ、付け加えたいことがある。ブラントは決して“憎き敵役”ではなかったということだ。米ラスベガスで村田からベルトを奪った彼は「再戦は村田のホームであるべき日本やるべき」と考えるフェア精神の持ち主。報道陣に対しても真摯な態度で取材に応じるナイスガイだった。村田との再戦に向け、管理栄養士を雇い、時差や気候に慣れるため、試合の2週間前に来日するなど準備にも怠りはなかった。ただ、試合当日のブラントは少し冷静さを欠いているように見えた。記者席の目の前の赤コーナー、第1ラウンドのゴングが鳴った瞬間、彼は右足でロープを蹴って飛び出していった。ブラント陣営に計算違いがあったとしたら、それは大阪のファンの“熱気”だったかもしれない。(記者コラム・大内 辰祐)
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