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【浜田剛史の目】パッキャオに油断「このぐらいの練習で勝てる」と…

[ 2017年7月3日 06:30 ]

WBO世界ウエルター級タイトルマッチ12回戦   ○同級1位ジェフ・ホーン 判定3―0 王者マニー・パッキャオ● ( 2017年7月2日    ブリスベン )

ホーン(左)と打ち合うパッキャオ
Photo By AP

 パッキャオには試合が決まった時から油断があったと思う。挑戦者は無名の相手で、映像で力量を判断して「このぐらいの練習で勝てるだろう」との計算があったのではないか。今回は上院議員としての仕事が終わってから、夜に練習していたと聞いている。プロボクサーは朝に走り、昼に体を休め、回復した夕方にまた練習という生活のサイクルで、それでも週1回は休みを必要とする。パッキャオも38歳という年齢から体を休めることが大事なのは分かっていたはずだ。しかし、仕事の疲れが残った状態で練習をして調子が上がらず、それでも勝てるとなめていたのだろう。相手がメイウェザーだったならば、こんな調整方法は絶対に取らない。

 ホーンは捨て身で、勝てば何でもいいと思い切り良く戦っていた。先に手を出し、打たれても必ず一発は返し、空振りすればそのままの勢いで体や頭をぶつけていた。ヘッドバットは米国なら反則と取られるが、地元での試合だったためか、あまり注意されなかった。パッキャオのパンチで一番いいのは踏み込んでの左ストレートで、相手が後退すればさらに踏み込んでいき、3度目の踏み込みで確実に仕留める。だが、ホーンは下がることなく左に対して右をぶつけ、得意の踏み込みを許さなかった。パッキャオは相手が下がらないものだから、状況を立て直そうにも立て直せないラウンドが続き、焦りから大振りも目立っていた。

 パッキャオは9回、ようやく先に手を出してホーンを追い込んだ。だが、10回前のインターバルでレフェリーからストップする可能性を告げられたホーンが「これが最後」と覚悟して前に出てきたため勢いが続かず、逆に打たれなかったホーンはダメージから早く回復することができた、15年11月に三浦隆司(帝拳)がフランシスコ・バルガス(メキシコ)に敗れた試合で、KO負け寸前だったバルガスがレフェリーから「試合を止めるぞ」と言われ、次の回に前へ出て三浦を倒したのと同じケースだ。この点でも、この日のパッキャオは運がなかった。

 体格は確かにホーンの方が大きく、クリンチなどで体力を削られたという見方もできるが、調子が良い時のパッキャオなら、上からのしかかられても逆にはねのけていただろう。おそらく再戦になるだろうが、パッキャオは万全のコンディションをつくるために練習環境を変える必要があるのではないか。(元WBC世界スーパーライト級王者)

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2017年7月3日のニュース