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日本ヘビー級王座 再び消滅の危機…繰り返す過去の“失敗”

[ 2015年7月2日 11:20 ]

14年4月、日本ヘビー級8回戦で石田順裕の顔面をとらえる藤本京太郎

 日本ヘビー級王座が再び消滅の危機にある。13年7月に56年ぶりに王座決定戦が行われ、藤本京太郎(角海老宝石)がオケロ・ピーターにKO勝ちして王者となった。その後、京太郎は3度防衛に成功した。しかし、今年4月に挑戦して敗れた同級1位の石田順裕が引退を表明、同級2位の竹原虎辰は今月14日に“定年”の37歳となる。日本ランカーが不在となり、次の防衛戦ができない状況だ。57年に片岡昇が初代王者になった時も選手不足のため、その後タイトルマッチは実施されなかった。今回も同じ失敗を繰り返すことになりそうだ。

 関係者は「他競技から転向する選手を期待していたけれど、いなかった」と口をそろえる。K―1から転向した京太郎など4人の日本ランカーがそろったことで復活した王座だったが、その後加わったのはミドル級から転級した石田だけ。他の格闘技やスポーツからの転向者は続かなかった。残念ながら、他競技の大型選手にヘビー級ボクシングの魅力を伝えることができなかったということだろう。

 世界的に見れば、ヘビー級はアリやタイソンらが活躍したボクシングの華。ファイトマネーも高額で夢がある。実は京太郎は先日、ニュージーランドの世界ランカーからファイトマネー5万ドル(約615万円)の試合のオファーをもらった。近年、日本王者のファイトマネーは1試合100万円前後が相場と言われる中で、破格の条件だった。当初は世界ランキング入りも見据えて対戦を検討した。しかし、6月中旬にWBCで15位に入って世界挑戦資格を得たことで、この対戦を見送ることにした。

 京太郎陣営の萩森健一マネジャーは「ワイルダー狙いでいきたい。難しいとは思うけれど、挑戦者に選んでもらえるように働きかけたい」と真顔で言う。WBC王者デオンテイ・ワイルダーは五輪銅メダリストで34勝33KO無敗の米国期待の星。挑戦が実現したとしても、勝てる可能性は限りなく低い。だが、もし捨て身のラッキーパンチが当たったら…。「有名になりたい」が口グセの京太郎にとっても、これ以上のチャンスはない。ヘビー級は夢のある階級だ。京太郎がそれを示していけば、次に続く日本人が出てくると思う。(柳田 博)

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2015年7月2日のニュース