【内田雅也の追球】秋の黒土で守り合い

[ 2025年10月28日 08:00 ]

空を見上げる藤川監督
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 甲子園には秋の青空が広がっていた。ただ、時折、黒い雲が流れてくる。雨がきそうな雲行きだった。きょう28日から七十二候の「霎時施(こさめときどきふる)」に入る。降ってもすぐにやむ時雨の季節である。

 かつて「野球批評家」を名乗った草野進は1984(昭和59)年の日本シリーズ、広島―阪急を前にポイントとして<まず、内野が人工芝ではない泥の球場をフランチャイズとする二チームの対戦であること>をあげていた。『プロ野球批評宣言』(冬樹社)で読んだ。旧広島市民と西宮、今はなき両球場である。

 <泥の球場>とは草野らしい表現だが、秋の土のグラウンドは確かに泥のように水分を含んでいるらしい。

 阪神園芸のグラウンドキーパーに昔聞いた話を思いだした。「水が上がる」という。「秋は寒暖差が激しくなる。夕方気温が下がると、土中の水分が地表に浮き出てくる。土も黒くなる。この現象をそう呼びます」

 ゴロの跳ね方も微妙に変わる。内野手は要注意である。草野は先の書で西宮での日本シリーズ第4戦の観戦記を載せている。3―2で広島が勝った試合だが「セカンドの差で勝負がついた」と語っている。広島・木下富雄が「打球に対して敵意の感じられるグラブさばき」など好守を連発して失点を防いでいた。

 今年の日本シリーズも舞台が人工芝の福岡から土の甲子園に変わる。守備が勝敗のカギとなる予感がする。

 阪神は今年、この甲子園でソフトバンクと交流戦を戦っている。6月20日からの3連戦は1―2(延長10回)、3―0、1―3といずれも接戦の1勝2敗だった。

 当時、ソフトバンク監督・小久保裕紀が阪神の守備をたたえたのを覚えている。「スーパープレーもあった。本当に阪神の守備力は素晴らしい。だからこそ、この貯金があるのだと思います」

 スコアを記録する際、好守備には赤ペンで★印を付けている。見返せば、3試合で8個もあった。中野拓夢、小幡竜平、佐藤輝明の好守、近本光司、森下翔太の好捕……などである。

 守り合いならば阪神は負けていない。望むところである。何しろ、甲子園の土や芝や、風や雨とともにシーズンを過ごしてきた選手たちなのだ。

 この日、阪神が練習を終えるころ、六甲の山なみに美しい夕焼けが見えた。 =敬称略= (編集委員)

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