【内田雅也の追球】「足止め」の塁上死4個

[ 2025年6月19日 08:00 ]

交流戦   阪神8―1ロッテ ( 2025年6月18日    甲子園 )

<神・ロ>3回、けん制球で一塁走者・藤原を誘い出す伊藤将(撮影・大森 寛明)
Photo By スポニチ

 同点を阻止した阪神の中継プレーが勝敗の分水嶺(れい)だった。あの本塁刺殺で流れを引き寄せたのだ。

 1―0の5回表1死一塁で走者・藤岡裕大がスタート。西川史礁は打ち、打球は遊撃頭上を越え、中堅左に転がった。

 近本光司が走りながら処理して小幡竜平へ。藤岡は三塁を回った。小幡はワンバウンドのストライク送球で本塁で刺した。インパクトから本塁刺殺まで手もとの計測で9秒07。よどみなく、流れるような好中継だった。

 この中継を含め、前半5回までに4個のタッチアウトがあった。これほど塁上死を奪えば自然と流れも向く。

 残る3つは、いずれも(結果として)二盗刺だった。順に書いてみる。

 2回表無死一塁で安田尚憲がスタート。藤岡は外角カッターを空振りし、安田は二塁手前で悠々アウトとなった。ヒットエンドランだろう。

 3回表無死一塁。打席は投手の田中晴也で送りバントの構えをしていた。1ストライクから友杉篤輝が走り、坂本誠志郎の好送球で刺した。

 さらにこの回2死一塁。藤原恭大をけん制球で誘い出し、1―3―6の転送で二塁上で刺した。記録は盗塁死である。

 ちなみに昨季の伊藤将登板時の盗塁阻止は3(許盗塁8)。1日で1年分を刺したことになる。

 4年前と2年前にも当欄で書いた。走者一塁での伊藤将は巧みな技で一塁走者を足止めにする。

 けん制球はゆったり足を上げてから投げたり、素早く投げたり。セットしたボールを長く持ったり、早く投げたり。足を大きく上げたり、スライドステップしたり。多彩な技術で走者のスタートを遅らせる。

 投球タイム(投球始動―捕手捕球の時間)は決して速くない。だからロッテも走ってきたのだろう。伊藤将は相手を上回る技を持っていたわけだ。降板後に「走者を出し、作戦もたくさん仕掛けられましたが、冷静に落ち着いて投げられました」とコメントしている。

 5回表の、あの好中継もヒットエンドランでの一塁走者のスタートが遅れていたのだろう。

 9安打も浴びながら6回1失点と粘れたのは「足止め」技術のおかげだ。「芸は身を助く」の今季初勝利だった。

 そして、その粘りは打線の援護も呼んだ。長い連敗を脱出する価値ある投球だった。 =敬称略=
 (編集委員)

続きを表示

「阪神」特集記事

「大谷翔平」特集記事

野球の2025年6月19日のニュース