セカンドキャリアについて真面目に考えようや スポーツ選手を目指す子どもが減ってまうで

[ 2023年2月26日 18:22 ]

鳥内秀晃氏
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 【名将・鳥内秀晃の人間話 頼むでホンマ】セカンドキャリアって、やっぱり大事やな。この前、講演を2本聴いて、再認識したわ。

 陸上十種競技の檀野俊さんは23歳の時、脳腫瘍を発症して、25歳で開頭手術。手術は成功したけど、ひどい目眩は続くし、最初は歩くことさえできんかったんやて。生きてくのも必死で、競技を諦めなあかんような状況やったのに、日々、小さい目標を立てて頑張らはってな。最初はハイハイの赤ちゃん、次はヨチヨチ歩きの幼児と勝負していって、血のにじむようなリハビリを重ねて、ついに競技へ復帰。マスターズ陸上競技(M25)で日本記録も出したって話を聞いて、ホンマにすごいと思ったよ。

 彼の生き様っていうのは、同じ病気になった人に本物の勇気を与えてるわな。病に冒された後のセカンドキャリアに、拍手を贈りたいし、自分が稼ぐお金のことばっかり言うてる一部のアスリートは、自分の姿勢を見直してほしいな。檀野さんみたいに絶対に諦めないアスリートがいてる一方で、「下手くそ、やめてまえ」って、すぐに口にする指導者もいてるやん。夢を与えていかなあかん立場なんやから、改めてほしいな。

 それから日本プロキャディー協会(JPCA)の森本真祐代表理事、清水重憲副代表理事の話も、考えさせられることが多かったわ。ゴルフ界の実情を聞いて、ビックリしたで。プロのトーナメントやのに、キャディーって専用の部屋とかないから、トイレに入って着替えたりしてるねんて。通算勝利数で1、2位のトップキャディーでさえ、そんな扱いやねんで。優勝賞金の何%とかでもらえる報酬にしても、契約書はなし。プロから1試合につき12~13万円もらえるらしいけど、交通費とか自腹やから、移動や飲食で消えてまうねんて。ありえんやろ。

 プロゴルフの協会には、アメリカでプレーしてきた人もいてるわけやん。向こうで一体、何を見て、何を学んできたんって言いたいわ。キャディーの仕事って、芝目やコースの特徴を伝えるだけやのうて、ゴルファーの精神状態を感じ取って、的確な助言を与えたりする重要なもんやん。キャディーの育成について、協会の偉いさんはどう考えているんやろ。そういう部分を整備するのが、仕事ちゃうんかな。

 聞くと、キャディーの世界も若い世代がなかなか育ってへんねんて。こんな待遇とか扱いやったら、やってみようという人が現れへんのも当然やわ。プロキャディーって宣言したら、誰でもなれるんやて。プロゴルファーと同じ一つの職業として、環境を整えたら、20代、30代でリタイアしたスポーツ選手にとっても、魅力的なセカンドキャリアの場所になると思うけどな。

 アスリート自身にとっても、引退後の生活設計をしっかり考えなあかん時期に来てるんとちゃうかな。ただでさえ少子化で競技人口が減ってるねんから、リタイアした後が不安定やったら、そのスポーツをやってくれる子どもがどんどん減っていくで。いつまでも現役でいられるわけちゃうし、引退して業界に残れるのも一握りやん。年金制度とか見つめ直して、セカンドキャリアをちゃんとせな、スポーツ界が廃れていくで。頼むで、ホンマ。(関西学院大アメリカンフットボール部前監督)

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