4万3120得点 NBAもうひとつの最多得点記録 ジェームズは“幻のジョーダン”をも超えられるか?
レイカーズのレブロン・ジェームズ(38)が7日のサンダー戦でNBAの通算得点記録部門で“頂点”に立った。18歳でNBAデビューを果たしてから20シーズン目、通算1410試合目でカリーム・アブドゥルジャバー(元バックス&レイカーズ)が保持していた3万8387のNBA記録を3点更新。NBAは1946年にBAAという組織名で発足しているが、通算得点の新記録が誕生するのは1984年4月5日のジャズ戦で、ウィルト・チェンバレン(元ウォリアーズほか)の記録(3万1419)を当時レイカーズに在籍していたアブドゥルジャバー(ジャズ戦では22得点)が更新して以来、38年と308日ぶりとなった。
アブドゥルジャバーはその後5シーズン、現役を続けたこともあって、1989年4月23日に最後の試合に出場してから(対スーパーソニックスで10得点)、33年と290日の歳月が流れたこの日にジェームズが記録を塗り替えたことになった。その長い歴史の中に存在している気が遠くなるような“小さな点”に、八村塁(24)という日本人選手がチームメートとしてその瞬間を見守っていたことにも何か奇跡的な巡り合わせを感じている。
NBAの通算得点記録保持者は1946年のリーグ発足時に得点王となったジョー・ファルクス(ウォリアーズ=1946~52年)から→ジョージ・マイカン(レイカーズ=52~57年)→ドルフ・シェイズ(ナショナルズ、現76ers=57~63年)→ボブ・ペティット(ホークス=63~65年)→ウィルト・チェンバレン(ウォリアーズほか=65~84年)→カリーム・アブドゥルジャバー(レイカーズほか=84~2023年)に続いてジェームズが史上7人目。ただしこの中で38歳で現役だったのはアブドゥルジャバーとジェームズの2人だけで、アブドゥルジャバーが36歳11カ月での記録更新だったのに対し、ジェームズは38歳2カ月という史上最年長での“頂点到達”となった。
スティールとブロックショットが公式記録になったのは1973年シーズン以降。この影響もあって草創期のスコアラーたちは得点以外の成績で欠けている部分があるとはいえ、ジェームズは通算リバウンドで32位、アシストで4位、スティールで9位、そしてブロックショットでも93位。5部門すべてで100位以内に名を連ねているのはジェームズただ1人で、得点だけでなくNBA屈指の歴史的なオールラウンダーとしての側面ものぞかせている。
さてNBAの通算得点記録を語るとき、多くのメディアとファンには“永遠の疑問”が残されている。それは3万2292得点で5位にランクされているマイケル・ジョーダン(元ブルズ&ウィザーズ)が、もし2度の引退と復帰を繰り返されなければどうなっていたか?ということ。ジョーダンが5位という順位を確保するのに要した試合数は1072。ジェームズより338試合も少ない状況の中で彼はここまで登りつめていた。
机上の計算をやってみる。たぶんそれが現実に起こったとしても、かなりの“誤差”があるのは覚悟の上である。
ブルズで930試合、ウィザーズで142試合に出場しているジョーダンは2度にわたってNBAから離れている。最初は父の不慮の死に見舞われたあとの93年シーズンで、2度目のファイナル3連覇を達成したあとの97年シーズン後が2回目。最初の引退のあと94年シーズン終盤(95年3月)に“I’m back”の一言で復帰して17試合に出場しているが、彼の競技人生にはいたるところで欠落している部分がある。
まずレギュラーシーズン全82試合に対する出場率をはじき出そうと思うが、17試合でプレーした94年シーズンは故障で残り65試合を欠場したわけではないので除外。すると残り14シーズンの数値を元に計算すると全1148試合に対して1055試合の出場になるので91・9%となる。そして94年シーズンを開幕から登録されていたと仮定すると、このシーズンは91・9%相当の試合数(75=小数点以下は切り捨て)で“幻のジョーダン”は2257得点(実際は17試合で457得点)を記録していたことになる。
40歳となっていた2002年シーズンを最後に引退するまで“全休”が4シーズン分あるので、平均出場試合数と平均得点をかけて足すと9030得点。さらに94年の修正部分を加えると、ジョーダンの残した“穴”には1万1285得点分が詰め込まれている計算になる。
これに現実の世界で残した3万2292得点から94年分(457得点)を引いて“穴埋め分”を足すと、合計4万3120得点。ジェームズが樹立した新記録は十二分に立派なもので、異議を唱える部分など何一つないが、もし彼が今後も現役を続けて“幻のジョーダン”を超えた日が来たのなら、私は1人で乾杯することにする。
アブドゥルジャバーの引退後、ジェームズが記録を書き換えるまでに要した歳月は約34年。では次にジェームズの記録が破られる日はいつになるのだろう?この話題で比較対象になっているのはマーベリクスのルカ・ドンチッチ(23)だが、昨季までの4シーズンでのドンチッチの出場率は80・2%。この期間の出場率が96・3%だったジェームズとは大きな開きがあり、デビューから4シーズン分での得点差は「1477」に達している。
ジェームズはまだ現役を続けていきそうなので、後続の選手にとってハードルはこれからもさらに上昇。ハードな日程を乗り切るために主力を休養させるのが日常となっている今のNBAにあって、平均ではなく積み重ねて築いていく記録の更新はこれからはさらに難しくなっていくのだろう。
私はジェームズの記録を塗り替える人物の登場を年齢的に見れそうにはない。だからもし数十年先に(数百年先?)目撃される方がいたら思い出してほしい。NBAの通算得点記録には“偉大な現実部門”と“脳裏をよぎる幻部門”の2つがあることを…。
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には7年連続で出場。還暦だった2018年の東京マラソンは4時間39分で完走。
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