追悼連載~「コービー激動の41年」その74 ブライアントが抱えた傷だらけの指
私は還暦を迎えていた昨年、所属しているシニア・バスケチームの練習で右手の小指を痛め「関節内骨折」と診断された。コートに跳ね返ったボールが、下に向けていた小指と“正面衝突”のような形となり、あらぬ方向へ曲がってしまった関節を痛みをこらえて自分で元に戻した(つもりだった)。しかし添え木で固定しなかったことが災いして、現在もまだひらがなの「へ」の字のように曲がったまま。力の強い人と握手をすると「うっ」と口で漏らしてしまうほどの痛みが走る。とは言ってもバスケ以外の日常生活で困ることはないので「手術で元に戻そう」とは考えていない。
2018年刊の「マンバ・メンタリティー」を読むまで、コービー・ブライアントについて知らなかったことがあった。それが小指の自由が効かなくなっていたということ。どちらの手の小指でいつ痛めたとのか?という詳細については触れていないのだが、当然それはシュートを放つ右手だと思うし、30歳前後の話だと推察できる。
本人によれば「骨折によるじん帯断裂」で以後、試合前に感覚を取り戻すために大き目のボールを強く握って指をほぐすエクスサイズを毎回やっていたのだそうだ。「この障害が自分の能力を抑え込むようなことにはならなかった」と語っているくらいなのでプレーそのものに直接的な影響はないとしているが、指の違和感というのはけっこうやっかい。「へ」の字の小指を抱える私はそう感じている。しかもブライアントはこの時期、他の指も故障していた。
これは詳細が明らかになっている。ブライアントが2009年12月11日のティンバーウルブス戦で痛めたのは右手人差し指。しかも試合直後に骨折だったことが判明して、各メディアもそう報じていた。しかしブライアントはゲイリー・ビッティ・トレーナーの入念かつ機能的なテーピングのおかげで以後もプレーを続行。骨折から4日後となったブルズ戦では42得点をたたき出した。ただし誰もが気が付かない間にブライアントは自分の大切な部分を変えていた。
「ジャンプシュートを放つとき人差し指と中指の2本でリリースするのだが、自分はそのうち人差し指に神経を注ぎ込んでいた。でもその指の感覚が(骨折で)無くなってしまった。だからリリースの中心を中指に変えざるを得なかった」
元ブルズのマイケル・ジョーダンは、来日時に都内で行った高校生を対象としたクリニックで「ジャンプシュートは人差し指と中指でリリースすること」と力説。バスケの神様には申しわけないが、その場にいた私と小柄な高校生たちは少し違和感を覚えた。
手が小さい選手にとってはその2本に、わずかながら薬指を加えた3本でボールを滑らさないとシュートは安定しないからだ。私はまだ3点シュートを「ワンモーション」という形でなんとか打つことができるシニア選手の1人だが(なかなか入りませんが…)、だからといって2本の指でのリリースは安定感を欠いて不安だ。2本にこだわることができるのはそれなりにサイズに恵まれてボールをワンハンドで握れる選手だと思うし、ブライアントもジョーダンもそうだったのだと解釈している。
しかしなぜブライアントの“中心指”が中指ではなく人差し指だったのかはわからない。NBAで全盛期を迎えていたころの「オレ流」の変更は難題だったはず。もし彼が「答えを見つけ出すまで練習を続ける」という無限の好奇心、いわゆる「マンバ・メンタリティー」の持ち主でなければ、シーズン途中でのフォーム変更は失敗に終わったかもしれない。
さて陰で“指の改造”を行っていたブライアントはこのシーズンで73試合に出場して27・0得点。移籍3年目となったパウ・ガソルが18・3得点を稼ぎ、メッタ・ワールドピースに名前を変えたロン・アーテストは11・0得点ながら1試合の平均スティール数は1・4でブライアント(1・5)とほぼ同じ。相手の得点源をつぶすという役割をフルにこなしていた。そして西地区の第1シードとなった2010年のプレーオフではサンダー→ジャズ→サンズと退けて3年連続でファイナルに進出。連覇のかかる最終決戦で顔を合わせたのはまたしてもあの“宿敵”だった。(敬称略・続く)
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には一昨年まで8年連続で出場。フルマラソンの自己ベストは2013年東京マラソンの4時間16分。昨年の北九州マラソンは4時間47分で完走。
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