ジャンプの伊藤謙司郎、現役引退「悔いはない」 16歳史上最年少でトリノ五輪代表

[ 2020年4月30日 05:30 ]

現役引退を決断した伊藤
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 ノルディックスキー・ジャンプ男子の06年トリノ冬季五輪代表、伊藤謙司郎(30)が現役を引退することが29日、分かった。今年3月に雪印メグミルクを退社。競技を続ける道を模索したが、新型コロナウイルス感染拡大が経済にも影響を及ぼす中で、競技を続ける環境を整えることが難しいと判断した。今後は5月1日付で08年に在籍した土屋ホームの社員となる。

 あれから14年。06年、当時16歳でトリノ五輪代表となった伊藤が、30歳で現役生活に終止符を打つことを決めた。

 「(現役は)厳しいと思った。思うような成績は出せなかったけど、選手生活は楽しかった。悔いはないかも。選手としては引退。今後、スキージャンプ界に貢献できたら」

 98年長野五輪団体金メダルの岡部孝信氏(現雪印メグミルクコーチ)や、14年ソチ五輪個人銀の葛西紀明(土屋ホーム)らと同じスキージャンプの盛んな下川町出身。指導者だった父・敏光さんの影響を受け、5歳から競技を始めた。下川小5年時の00年夏には札幌・大倉山ジャンプ台を飛んで周囲を驚かせた。

 06年トリノ五輪では下川商1年の16歳で当時スキー競技史上最年少の代表となった。だが個人、団体の計3種目で出場機会がなく、「家族に五輪の舞台で飛んでいる姿を見せたかった」と伊藤。その悔しさをバネに競技と向き合ったが、「技術的に変えようとしたが、劇的に変わることはなかった。世界で戦うことを何年も前から諦めてしまったのかも」と振り返った。世界ジュニアや世界選手権には出場したが、五輪の舞台で飛ぶことはできなかった。

 最も印象に残る大会は、15年3月の宮様大会ラージヒル(大倉山)の優勝を挙げた。「みんな一緒になって喜んでくれた。それがうれしかった」。明るい性格で誰からも愛されたジャンパーが、静かに一線を退く。

 今後は5月1日付で土屋ホームに入社。08年4月から半年間在籍した古巣で社員となる。「感謝しています。いつか指導者になれるように勉強して、五輪で何らかのサポートをしたい」。これまでの栄光と挫折の経験を今後につなげる。

 ◆伊藤 謙司郎(いとう・けんしろう)1990年(平2)1月8日生まれ、下川町出身の30歳。下川商1年時の06年トリノ五輪代表。下川商卒業後、08年から土屋ホームに所属も同年10月退社。09~20年は雪印メグミルクに在籍。W杯個人最高位は16年2月ラハティ(フィンランド)大会23位。コンチネンタル杯では06年12月ロバニエミ(同)大会での1勝。1メートル80。家族は妻。

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2020年4月30日のニュース