卓球・松下浩二氏、21年東京へ張本智和&伊藤美誠の進化に期待

[ 2020年4月24日 05:30 ]

五輪延期の光と影

張本智和(左)と伊藤美誠
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 1年延期となった東京五輪だが、卓球はいち早く代表の維持を決定した。五輪4大会連続出場でTリーグチェアマンの松下浩二氏(52)は、男子の張本智和(16=木下グループ)や伊藤美誠(19=スターツ)が、延期でさらなるレベルアップを図ることができるメリットを強調。一方、延期による大きなデメリットは見当たらないとした。

 日本協会の強化本部は速やかに、内定していた東京五輪代表の維持を決めたが、私もそれでいいと感じた。国際大会もストップしているので、選考できるような場も当分ない。

 選手の心理的にも良いと思う。五輪代表争いは物凄く過酷で、いかに国内のライバルより上にいくかが目標になってしまう。リオデジャネイロ五輪の女子団体は銅メダルだったが、本来なら中国に勝てないまでも銀メダルは獲らないといけなかった。銅メダルに終わった理由の一つとして、代表争いで疲れてしまった部分もあったかなと、個人的には感じていた。

 1年延期となったことで準備期間をしっかり取れるのは、大きなメリットになるだろう。張本、伊藤、平野は若いので、まだまだ伸びていける。世代が上の水谷や丹羽、石川はきっちり調整していくことで、本来のパフォーマンスを出せるのではないか。

 男女の世界ランクで最上位の張本、伊藤については具体的なポイントを挙げたい。

 16歳の張本は世界4位につけているが、修羅場の経験がまだ少ないと感じる。攻めていくスタイルだが、攻め方が単調になってしまう時がある。水谷のように攻めたり守ったり、ペースに変化をつけることにはまだたけていない。

 精神的に追い込まれて攻めるプレーができなくなった時が、張本の負けパターン。いいところを出せば世界チャンピオンになれるポテンシャルがあるが、相手も研究してくるし、なかなかそうもいかない。ペースを変化させたり、プレーの幅を広げることを、この1年で取り組んでほしい。

 世界2位の伊藤は、リオ五輪にも出場するなど経験値が積み重なってきている。どんなタイプの選手と対戦しても勝てるものを既に持っている。19歳だが、凄く完成度が高い。現時点で持っている技術の完成度をさらに高め、ミスの割合を減らしていってほしい。変幻自在のスタイルで、意外性があるのも伊藤の特長。プレーの引き出しを増やしていけば、中国の誰と対戦しても負けないレベルになれるだろう。

 卓球に関しては、延期に伴うデメリットはそれほどないのではないか。本番までの期間が延びることで海外勢に研究されるかもしれないが、既に日本のトップ選手は研究されている。強いて挙げれば、32歳で五輪を迎える水谷のコンディション。だが世界大会のシングルスでメダルを獲得するような選手は、1年でそんなにパフォーマンスは下がらないと私は考えている。

 ワールドツアーの再開時期は見通せないが、現時点では世界選手権団体戦(韓国・釜山)が9月27日~10月4日となった。東京五輪直前の21年6月には、本来なら五輪イヤーに開催されない個人戦の世界選手権(米ヒューストン)も行われる予定だ。世界の舞台で勝てば大きな自信がつき、負ければネガティブになるのは中国選手も同じ。ライバルを破って好イメージをつくり、五輪本番に臨んでほしい。

 【美誠、日本勢最高世界2位浮上 世界ランク一時凍結】新型コロナウイルスの感染拡大で、国際卓球連盟(ITTF)は6月末まで国際大会などを停止することを決めている。今月16日には最新の世界ランクが発表されたが、国際大会の中止や延期が相次いでいることから、今後は世界ランクの更新は一時凍結される。女子の伊藤は、現行のランキング制度が始まった91年以降、男女通じて日本勢最高位となる2位に浮上。所属先を通じて「どの選手に対しても、自分がどんな状態であっても勝てるように、もっともっと頑張ります」とコメントし、男子の張本は五輪延期が決まった3月末に「最高のパフォーマンスと笑顔をお見せできるように気持ちを切らさず頑張ります」との談話を発表した。

 ◆松下 浩二(まつした・こうじ)1967年(昭42)8月28日生まれ、愛知県出身の52歳。全日本選手権の男子シングルスは4度優勝し、男子ダブルスでは7度の日本一に。97年世界選手権の男子ダブルスでは銅メダルを獲得した。プロ選手としてドイツのブンデスリーガなどでも活躍。五輪は92年バルセロナから4大会連続出場した。09年1月の全日本選手権を最後に現役を引退し、現在はTリーグのチェアマンを務める。

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