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【コラム】西部謙司

パリ五輪はまた別のチーム

[ 2024年5月15日 16:30 ]

<U-23日本代表・U-23ウズベキスタン代表>優勝を喜ぶ日本イレブン(撮影・小海途 良幹)
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 サッカー五輪代表男子は、特殊な位置づけの大会だ。

 世界大会としてはFIFAワールドカップがあるため、五輪は年代別世界大会になる。しかし、U-20、U-17のようにU-23ワールドカップかというとそうではない。オーバーエイジ枠が設けられていて完全な年代別ではない。

 FIFAとIOCの妥協の産物なわけだが、アジアはさらに複雑だ。

 アジアの出場枠は3+1。U-23アジアカップで3位以内がパリ五輪へストレートイン。4位はプレーオフに回る。こちらはU-23の大会名のとおりで年齢制限がある。

 では、U-23アジアカップで見事優勝したU-23日本代表がそのままパリ五輪へ臨むのかというとそうではない。おそらくオーバーエイジ枠を使って3人が新たに入ってくる。さらに、この大会で招集できなかった欧州クラブ所属の選手たちが加わる可能性がある。U-23アジアカップは招集に強制力がなく、呼べる選手と呼べない選手がいた。

 そのうえパリ五輪は18人編成だが、U-23アジアカップは23人編成だった。単純に5人はメンバーから外れる。オーバーエイジと新たに招集される欧州組もいると仮定すると、パリ五輪行の切符を獲得した選手たちの半分以上が本大会のメンバーには入らないということもありうる。

 チーム作りも、U-23アジアカップとは全く違ってくるだろう。

 U-23アジアカップは同世代で力も均衡した23人だった。システムと運用は日本代表と同じ。過密日程を勝ち抜くためのターンオーバーを想定し、戦術は変えずに選手を入れ替えた。誰がプレーしても一定水準をキープできたのは強みだった。レベルが均衡しているので、いわゆる「眼が揃っている」状態。タイミングとアイデアを共有しやすい。短期間で2チームぶん機能させるには、これしかない編成強化方針だったといえる。

 ところが、パリ五輪は全く事情が異なる。

 よりレベルの高いオーバーエイジ、欧州組が入ってくるとすると、「眼が揃わなくなる」可能性が高い。彼らに合わせようとするとミスが多くなるだろう。この予想されるギャップをごく短期間で埋めなければならない。出場権を獲得するまでと、本大会ではメンバーも編成方針も、取り組む課題も大きく変化するわけだ。

 ワールドカップより歴史のある五輪とはいえ、サッカー界では何とも中途半端な大会になっていて、各国代表の取り組みにも温度差があるのが現状だ。出場権獲得という第一関門を見事にクリアした日本だが、それと本大会はまだ別の話なのだ。(西部謙司=スポーツライター)

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