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【スポニチ蹴球部コラムFootひと息】カズがJFL初ゴールを届けたかった相手とは

[ 2022年11月9日 07:00 ]

今季あと2試合。信念を胸に戦いの場へと向かうカズ
Photo By スポニチ

 速く美しい、55歳とは思えぬ弾道だった。JFL鈴鹿ポイントゲッターズのFW三浦知良(55)が先月30日のFCティアモ枚方戦で決めた豪快なPK。横浜FC時代の17年3月12日以来、実に2058日ぶりのゴールだった。同時出場していたある若手は「1メートル横でカズダンスを見た!」と大喜び。メンバーそろっての派手な舞いは、居合わせたサポーターや選手個々のSNSでも拡散され、大きな話題となった。

 試合後の取材。いまだにキングの影響力を痛感する事実を本人の口から聞いた。

 「カズダンスを教室で踊ってほしい!って言ってくれる。僕が日本代表などで活躍している姿は生では見ていないはずなのにね」

 カズが自発的に行う鈴鹿市内の小学校訪問プロジェクト「夢で逢えたら」で接する児童から、いつも同じ要望を受けるという。そのたびに「ゴールを決めないと踊らないものだよ」と諭しているそうだが、一日も早く地元の少年少女に雄姿を届けたい思いや重圧はあったはず。「決められて、非常によかった」という安堵(あんど)の言葉は、心の底から出たものだ。

 6月にクラブの百年構想資格がはく奪された。早々に来季のJ3昇格がなくなった上、自身も5月中旬に負った右脚の故障が長引き、もんもんとした日々を過ごした。それでも黙々と鍛錬を続け、時には若手を引き連れて休日返上や居残り練習も敢行。昼食を囲んできずなを深め合ったことも、一度や二度ではない。最大の目標が消えた中でも見せ続けた潔さ。ある主力選手は言う。「カズさんはいつも背中で示してくれる。僕らはその背中を見てやるだけ」――。

 22年シーズンも残り2試合。先発出場は依然、厳しい状況で後半の限られた出番になることが濃厚だ。だが「すべてのプレーにゴールに値する意味がある」という信念を胸に、背番号11は戦いの場へと向かう。老若男女問わず、サポーターがスタジアムに足を運び続けるのは、置かれた場所で咲こうとするその立ち居振る舞いを目に焼き付けたいからだ。今季ラスト180分。ピッチ内外でカズはどんな姿を見せてくれるのだろう。(八木 勇磨)

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2022年11月9日のニュース