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【独占手記】佐藤寿人氏 おめでとう、トシ! カップを掲げている姿は胸が熱くなりました

[ 2022年10月23日 08:00 ]

ルヴァン杯決勝   広島2―1C大阪 ( 2022年10月22日    国立 )

第93回天皇杯全日本サッカー選手権大会決勝で敗れ、肩を落とす広島のMF青山敏弘(左)とFW佐藤寿人
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 決勝が国立競技場で行われ、広島がC大阪を2―1で破り初優勝を飾った。0―1の後半アディショナルタイムの逆転劇。カップ戦決勝過去8戦全敗という負の歴史に終止符を打つとともに、かつて広島でプレーし、21日に急逝した工藤壮人さん(享年32)に劇的Vをささげた。2得点のFWピエロス・ソティリウ(29)が最優秀選手。クラブOBで元日本代表FW佐藤寿人氏(40)は本紙に独占手記を寄せた。

 おめでとう!どの時代の選手、どの時代のチームも成し遂げられなかったことを、今の選手たちがやってくれました。勝者の後輩たちを誇りに思います。

 天皇杯、ルヴァン杯で僕は4回ファイナルを経験しました。13年度の天皇杯では主将としてプレー。J2降格が決まった後の07年度決勝とは違ってリーグ連覇の自信を胸に臨んだのですが、横浜さんに敗れました。

 14年のルヴァン杯は僕の2得点でリードを奪ったけどG大阪さんに逆転されて…。2点を先に奪って負けたことがほぼなかったのに“このタイミングで来るの?”という感じで打ちひしがれました。勝負事なので勝者と敗者が存在するのは当然。でも決勝で負けるならば、その前に負けた方が良いとすら思えましたし、一発勝負の怖さをあらためて知りました。

 今年はその14年以来のルヴァン杯決勝。あの日、トシ(青山敏弘)の涙は自分以上にこたえるものがありました。彼が主将に就任した初年度。僕も主将を経験したので分かりますが、先頭に立つ人間の重圧や責任は大きい。悔しさは人一倍だったと思います。今年は主将ではありませんが、天皇杯決勝は敗戦。だから、彼がカップを掲げている姿は、胸が熱くなりました。

 今季から指揮を執るスキッベ監督の下、今のチームは競争力が高いと感じます。開幕から序列がこれほど変化するチームは少ない。野津田もカップ戦で結果を残して信頼を勝ち取りました。誰が出てもよく整理され、個々の特徴も生かされています。

 カップ戦は「WINNER」で、リーグ戦の長丁場を制してタイトルを獲るチームは「CHAMPION」だと思っています。新しい扉を開いた彼らが未来をどうつくっていくのか。リーグ戦の「CHAMPION」の資質もあるので楽しみにしています。

 そして21日、日本が悲しみに包まれました。同じサッカー人として、工藤壮人さんのご冥福をお祈りいたします。 (元日本代表FW)

 ◇佐藤 寿人(さとう・ひさと)1982年(昭57)3月12日生まれ、埼玉県春日部市出身の40歳。00年に市原(現J2千葉)でプロデビューし、05年から16年シーズンまで広島に在籍。12、13、15年はリーグ制覇に貢献。20年に現役引退した。国際Aマッチ31試合出場4得点。J1とJ2を合わせて通算561試合出場220得点。1メートル70、65キロ。

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