「どうする家康」岡田信長流 松潤家康への愛情!演出語る“異色の本能寺”裏側&感謝「2人のブロマンス」

[ 2023年7月29日 13:50 ]

大河ドラマ「どうする家康」第28話。ついに徳川家康(松本潤・左)が織田信長(岡田准一)を討った…?(C)NHK
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 嵐の松本潤(39)が主演を務めるNHK大河ドラマ「どうする家康」(日曜後8・00)は今月23日、第28回が放送され、中盤のクライマックスにして戦国最大のミステリー「本能寺の変」(天正10年、1582年)を迎えた。「本能寺の変」が描かれる大河は18作目だが、今作は織田信長と徳川家康の絆を全面に押し出した異色の結末。俳優の岡田准一(42)が初回から強烈なインパクトを刻み、ドラマを牽引した孤独なカリスマの最期に、SNS上には「岡田信長ロス」が広がった。同回を担当したチーフ演出・村橋直樹監督に岡田の魅力を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 「リーガル・ハイ」「コンフィデンスマンJP」シリーズなどのヒット作を生み続ける古沢良太氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ62作目。弱小国・三河の主は、いかにして戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのか。江戸幕府初代将軍を単独主役にした大河は1983年「徳川家康」以来、実に40年ぶり。令和版にアップデートした新たな家康像を描く。古沢氏は大河脚本初挑戦。松本は大河初主演となる。

 主人公・明智光秀と織田信長の友情を描いた2020年の大河「麒麟がくる」も新解釈だったが、今作は家康&信長の関係を初回から「白兎と狼」として濃密に紡いできた。これが“独創的な本能寺”に昇華した。

 村橋監督は「2人の関係は『ブロマンス』(男性の熱い友情、精神的なつながりを意味するBrotherとRomanceの合成語)だなと思います。中国の故事だと『刎頸(ふんけい)の交わり』。裏切りが日常茶飯事の戦国時代において、信長と家康の同盟が約20年も続いたのは珍しいことで、2人の間には単なる利害関係だけじゃない何かがあったのかもしれません。2人の個人的な感情を軸に、社会的大事件である本能寺を描き切るのも面白いと思いました」と振り返る。

 もともと報道畑だった村橋監督が初めてドラマに携わったのが、岡田が主演を務めた14年の大河「軍師官兵衛」。当時は助監督で「香盤表(スケジュール)の見方から、右も左も分からない状態」。今回、チーフ演出としての再会に、岡田も「村ちゃんが」と驚いたという。

 「参謀役の官兵衛に比べると、信長というのは、岡田さんが初っ端からパワー全開で演じてもらえる役。どれだけ出力を上げても『まあ、信長だし』ということで許されてしまうので(笑)、思い切りやってもらいました。最初から岡田さんの最大出力を味わえる機会に恵まれて、演出としても、いち視聴者としても最高に楽しい1年間の撮影でした」

 “岡田信長”は初回(1月8日)のラストに登場。今川義元の首を槍の穂先にぶら下げ、進軍。馬上から天高く槍を放り投げた。「待ってろよ、竹千代。俺の白兎」――。登場シーンは合計約1分ながら、いきなり話題沸騰。その後も、家康への突然のビンタ(第4回、1月29日)、耳噛み(第15回、4月23日)などが反響を呼び続けた。

 「岡田さんと松本さんの関係は、まさにこのドラマにおける信長と家康でした。自由にお芝居をする岡田さんに、松本さんが必死で付いていく。しかし、実はそれが岡田さん流の愛情だったと感じています。急にビンタをしたり、噛みついたり、信長として突発的なお芝居をぶつけることで、松本さんのまだ見ぬ部分を引き出そうとしていました。松本さんはとても頭が良い方で、台本や物語の流れから逆算でお芝居を組み立てていくタイプ。だからこそ私は演出の立場から、どうやって“計算外の芝居”が松本さんから引き出せるか、ということを考えてやっているつもりです。しかし、岡田さんはそれ以上のことを共演者の立場からやろうとしていました」

 第27回「安土城の決闘」(7月16日)、信長は「恨め。憎んでもいい。だから、俺の側で、俺を支えろ」「なら、やればいい。俺はわずかな手勢を率いて、京に向かう。本当におまえが俺の代わりをやる覚悟があるなら、俺を討て。待っててやるさ。やってみろ」、家康は「確かに、わしは弱い。だが、弱ければこそできることがあると、わしは信じる。行き詰まっておるのは、お主ではないのか。弱き兎が、狼を食らうんじゃ」などと本音をぶつけ合った。物別れに終わり、これが最後の対面となった。

 予定調和なシーンにならないよう“松潤家康”の感情を動かそうとした岡田の“仕掛け”のハイライト。「岡田さんの強烈なお芝居を前に、ボロボロになった見たことのない松本家康が画面に映っていました。あれは、他ならぬ岡田信長が引き出したものです」と称えた。

 岡田は「軍師官兵衛」の中盤、とあるシーンで黒田官兵衛という役をつかめたといい「そういうきっかけを松本さんにもつくってあげたいというようなことを大河主演の先輩として、日々おっしゃっていました。“安土城の決闘”を演じた後、ある種『役割を果たせた』『バトンは渡せた』と思ったんじゃないでしょうか。バトンを受け取った松本家康が、どのように変わっていくのか。現場で最初にお芝居を見る者として、楽しみでなりません。今後、視聴者の皆さんが『松本家康、変わったな』と感じてくださるのであれば、それは岡田准一さんと松本潤さんの『ブロマンス』から生まれたものだと、私は思います」と2人の絆に感謝した。

 そして、映画「花よりもなほ」「蜩ノ記」「関ヶ原」「散り椿」「燃えよ剣」などに出演してきた岡田は、今や時代劇の未来を担う存在。今作も、第4回で信長&家康が激しくぶつかった相撲シーンのアクションを“振付”。自身の演技はもちろん、作品としての完成度を追求している。

 「大河ドラマも含め、時代劇全体を盛り上げようとストイックに闘い続けている方。その姿勢は、今回の信長像にメタ的に通じるものがあったと思います。なので、僕たちスタッフも岡田さんに何とか食らいついていこうと、がむしゃらになりますよね。岡田さんと過ごした貴重な時間と経験を、最終回まで生かしていきたいと思います」

 岡田は今月16日、安土城のある滋賀県近江八幡市でトークショー&囲み取材。3回目の大河出演と時代劇の未来について問うと「3回目は、オファーがあるかどうかですよね。それが肝かなと思います。ロケに出られないとか、お金がかかるとか、大河ドラマを作るのも現状大変なんですけど、時代物は文化としてはいいコンテンツなはずなので、役者だけじゃなく、かつらや小道具を作るスタッフも続けていかないと。時代劇という名前がいいかは分かりませんが、これからも時代物は作っていけたらいいなという希望はあります」と語った。

 ◇村橋 直樹(むらはし・なおき)2010年、中途採用でNHK入局。初赴任地は徳島放送局。13年からドラマ部。演出の1人を務めた18年「透明なゆりかご」(主演・清原果耶)、19年「サギデカ」(主演・木村文乃)が文化庁芸術祭「テレビ・ドラマ部門」大賞に輝いた。大河ドラマに携わるのは14年「軍師官兵衛」(助監督)、17年「おんな城主 直虎」(演出、第28回・第32回を担当)、21年「青天を衝け」(セカンド演出、全41回中9回を担当)に続き4作目。今作は第2回「兎と狼」、第3回「三河平定戦」、第4回「清須でどうする!」、第11回「信玄との密約」、第12回「氏真」、第18回「真・三方ヶ原合戦」、第25回「はるかに遠い夢」、第28回「本能寺の変」を担当している。

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