「どうする家康」ネット号泣“信康の最期”演出語る裏側「鬼気迫る 見事な出力」悩み抜いた細田佳央太絶賛

[ 2023年7月8日 13:50 ]

大河ドラマ「どうする家康」第25話。自ら最期の時を迎える松平信康(細田佳央太・中央)。平岩親吉(七之助)(岡部大・右)と大久保忠世(小手伸也)が必死に食い止めるも…(C)NHK
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 嵐の松本潤(39)が主演を務めるNHK大河ドラマ「どうする家康」(日曜後8・00)は今月2日、第25回が放送され、前半最大のクライマックス「築山殿事件」「信康事件」(天正7年、1579年)が描かれた。主人公・徳川家康が愛妻・瀬名と愛息・松平信康を同時に失う人生最大の悲劇。戦のない“慈愛の国”を目指し、信念を貫いた2人の最期に、号泣の視聴者が続出。SNS上には「瀬名&信康ロス」が広がった。同回を担当したチーフ演出・村橋直樹監督に撮影の舞台裏、信康役・細田佳央太(21)の魅力を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 「リーガル・ハイ」「コンフィデンスマンJP」シリーズなどのヒット作を生み続ける古沢良太氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ62作目。弱小国・三河の主は、いかにして戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのか。江戸幕府初代将軍を単独主役にした大河は1983年「徳川家康」以来、実に40年ぶり。令和版にアップデートした新たな家康像を描く。古沢氏は大河脚本初挑戦。松本は大河初主演となる。

 第25回は「はるかに遠い夢」。武田四郎勝頼(眞栄田郷敦)が暴いた瀬名(有村架純)と松平信康(細田佳央太)の“慈愛の国”計画。それはやがて、織田信長(岡田准一)の知るところとなる。2人の始末をつけなければ、織田と戦になる。それでも徳川家康(松本潤)は信長の目を欺き、妻子を逃がそうと決意。一方、瀬名は五徳(久保史緒里)に「姑は悪女だ」と訴える信長宛の手紙を書かせ、全責任を負う覚悟。岡崎城を出た信康もまた、逃げ延びることを良しとしない…という展開。

 家康は“替え玉作戦”を敢行。しかし、瀬名は身代わりの女を逃した。

 紅葉の二俣城。平岩親吉(七之助)(岡部大)と大久保忠世(小手伸也)は信康を説得。髭も伸びた信康が「母上がお逃げになってからと言うたはず」とクギを刺すと、服部半蔵(山田孝之)は「お方様は、無事お逃げになりました」「殿が直々に説得なさいました。とある村の古寺に、身を寄せておられます」と報告した。

 半蔵に目をやると、信康は悟る。「おまえは忍びのくせに、嘘が下手じゃな。ご自害、なさったのじゃな」「すべては、若殿に生き延びていただくためでござる。お逃げくだされ」。信康は息を吐くと、七之助に「手を貸してくれ」と抱えてもらい、一瞬の隙に刀を奪って自らの腹に突き刺した。

 「七、我が首を…しかと…信長に…届けよ。(忠世に)わしが…徳川を守ったんじゃ!(這いつくばり、半蔵に)信康は…見事…務めを果たしたと…父上に…」

 七之助は慟哭、忠世は絶句。半蔵が刀を抜く。「ならん、半蔵」と信康に覆いかぶさる七之助に「どけ!」。忠世が七之助を引き離し「楽にして差し上げよ」。信康は最後の力を振り絞り、半蔵を見上げる。刀を振り上げた半蔵は一筋の涙。「御免」――。

 細田のクランクイン直前に、ちょうど第25回の台本が完成。村橋監督は「信康の最期に向かって、どういうふうに気持ちを高めていけばいいのか、細田さんが悩んでいました。現代人にはなかなか理解しがたい感情や行動ですし、細田さんは時代劇が初めてということもありましたからね。学生の役とかだと自分に置き換えられることもあると思うんですけど、時代劇の価値観は自分の延長線上にはなかなかないですよね。そんな時、松本さんが“家族飲み”と称して食事会を開いてくれて、松本さんと有村さんと僕たちで細田さんを激励しました」と振り返った。

 細田は別日のインタビューで「あくまで死ぬのは役なんですけど、僕は信康のことが大好きだったので、どうしても人ごとにできなくて。最初の頃は『死にたくない』とばかり思っていました。ここまで役に入ってしまったのは初めてです」と述懐。「なので、そこから、どう脱却するのか、どう信康として死の覚悟を背負うのか。初めての時代劇で所作も大変でしたが、どうすればその境地に自分を落とし込めるのか、その方が凄く苦労しました」と打ち明けた。作品の中で生涯を終える役は、自身のキャリア初だった。

 「最近は『やっぱり役作りは孤独なもの』とか『1人で役に向き合わないといけない』と思いがちだったんですけど、今回は監督や共演者の皆さんが『できることがあったら、何でも言って』とか『分からないことがあったら、何でも聞いて』と声を掛けてくださって。だいぶ気持ちが楽になりました。あらためて『自分は1人じゃないんだ』ということを実感できて、そのおかげだと思います」

 村橋監督は細田のほとんどのシーンに立ち会ったが、役作りへの具体的なアドバイスはせず。「僕たちも答えを持っているわけじゃないですから、別に声を掛けることもなく、スタジオのどこか遠くから見守っている感じでいました(笑)。役作りを助ける環境をつくることはできますが、それでも結局は俳優が一人でたどり着かなくてはいけないもの。細田さんは自分の力で日々、役を深めていって、ラストシーンは言葉にならないぐらい、素晴らしいお芝居をもらいました。スタジオ入りの時から、助監督が『声を掛けられなかった』というほど鬼気迫る雰囲気をまとっていて、撮り始める前から『これは凄いシーンになる』と感じました」と明かした。

 「信康が七之助に抱かれたまま息絶えるより、苦しみながらも遺志を伝える姿に迫力が出るよう、最期の言葉は七之助・忠世・半蔵に分けて、1人1人に向けて言ってほしいとだけ、お願いしました。あとは細田さんの見事な出力ですね。(細田の主演映画)『町田くんの世界』(2019年公開)で一目惚れだったので、今回の心優しき勇猛な青年という新しい信康像を体現してくれて、本当にうれしく思いました。それに呼応するように小手伸也さん、岡部大さんの演技も素晴らしく、半蔵はアウトサイダーな存在なので、信康から少し離れたところにいてもらったんですけど、そこから介錯するのは自分しかいないと距離を詰めていって決心に至るまで、これもまた、山田さんから素晴らしいお芝居をもらいました」

 ◇村橋 直樹(むらはし・なおき)2010年、中途採用でNHK入局。初赴任地は徳島放送局。13年からドラマ部。演出の1人を務めた18年「透明なゆりかご」(主演・清原果耶)、19年「サギデカ」(主演・木村文乃)が文化庁芸術祭「テレビ・ドラマ部門」大賞に輝いた。大河ドラマに携わるのは14年「軍師官兵衛」(助監督)、17年「おんな城主 直虎」(演出、第28回・第32回を担当)、21年「青天を衝け」(セカンド演出、全41回中9回を担当)に続き4作目。今作は第2回「兎と狼」、第3回「三河平定戦」、第4回「清須でどうする!」、第11回「信玄との密約」、第12回「氏真」、第18回「真・三方ヶ原合戦」、第25回「はるかに遠い夢」を担当している。

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