津田寛治 ドラマや映画よりも劇的なデビュー秘話「カメラ回ってるのかな、というくらいの…」

[ 2023年6月12日 14:26 ]

俳優の津田寛治
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 俳優の津田寛治(57)が12日に更新されたYouTubeチャンネル「丈熱BAR」にゲスト出演。本格デビューとなった映画「ソナチネ」に出演するきっかけとなった秘話を披露した。

 俳優になるため、津田が故郷の福井から東京に出たのは高校卒業の時。事務所に所属したものの、エキストラの役しか回ってこず、退所して、毎日映画を観る日々を過ごしていた。そのとき琴線に触れたのが「その男、凶暴につき」(北野武監督、1989年)だった。

 「(ビートたけしさんが)あんなの撮ると思わないじゃないですか。コメディなのかと言えば違うし、バイオレンスなのかと言えば、それも違うし。あの頃の日本映画でカテゴライズできないような映画を撮ってたんですよ」

 すっかり虜になった津田は、北野映画への出演を目標に置く。当時、アルバイトしていた撮影所近くの喫茶店に、北野監督が時々来店することを聞き、直談判するためのプロフィールや手紙を準備。喫茶店のママも全面協力を約束してくれ、ついに、その日が訪れた。「あ、一人になられた、と思い、トイレで渡しちゃったんです。普通だったら、トイレまで追っかけてこないでよ、とか、外にいる人に渡しといてよ、っていうところなのに、“分かりました”って(受け取ってくれた)」

 憧れの人に直接行動を取ったことで、津田の中には達成感があったという。「もう、(映画に)出られなくていいや、と思ったんですね。オレは第一線で活躍している人に、こうやって接せられたんだから、この先やっていける、と」。そして1年後、「ソナチネ」のクランクインを控えた北野監督が再び、来店した。津田のことを覚えていた北野監督は「あんちゃん、まだ俳優目指してるの?」と軽口をたたき、津田も覚えてくれたことに感激したものの、件のママが横から「猛抗議」した。

 「監督、ひどいじゃないですか。うちの子はね、1年間待ってたんですよ。監督がプロフィール受け取ってくれたって喜んだり、いろんな人にオーディション出たいって声を掛けていたのに、明日クランクインって、どういうことですか!」

 あまりの剣幕に、さすがの北野監督も「退散」。喫茶店の奥で、10人を超える「北野組」の面々と打ち合わせを始めた。「糸一本でつながっていたあれ(望み)がプチっと切れたな」と落胆していた津田に、北野監督が声を掛けた。「お兄ちゃん、出番だよ」。飲み物の注文と思い、駆け寄った津田を前に、北野監督がスタッフに語り始めた。

 「このあんちゃんさ、オレの行きつけの喫茶店でウェイターやってるんだよ。だけどさ、派手派手の服を着て、ブワーと(爆発したような)頭して働いてるから、オレがこのあんちゃんに“お前、ウェイターだったら、ウェイターらしい格好して働けよ”とか言って。このあんちゃん、これくらいのアップ(バストサイズ)で“すみませんでした”って、これ一つ(シーンを)増やすから」

 突然の「プラン変更」にスタッフも、津田もあ然茫然。「こんなことが現実に起こるわけない、と思って。今、これがカメラ回ってるのかな、というくらいの映画的な感じだったんですよ」。何も言えず、立ち尽くす津田に、北野監督は優しく「今回、すみません一言でごめんな」と言った。

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2023年6月12日のニュース