渡辺王将「反発心」見せるか 96年にストレート敗退の谷川九段、同じ悔しさ味わってほしくない

[ 2022年2月11日 05:30 ]

第71期ALSOK杯王将戦

王将戦第3局、117手目▲9三歩まで
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 【谷川浩司九段eye 王将戦7番勝負を読む】藤井の開幕3連勝で迎えた第4局。王将4期の谷川浩司九段(59)が第3局を解説するとともに、第4局を展望。後がなくなった渡辺に「反発心」を求めた。

 王将戦史上、開幕3連勝した18人は全員7番勝負を制した。王将位の行方はもう大勢決したのか。谷川によれば内容は僅差ばかりだという。

 「第1局に続いて見どころの多い熱戦でした」。その第3局。藤井が飛車を下段に据え、逆サイドの香を上がって大展開をもくろんだ地下鉄飛車。「端へは結局動きませんでしたが4、5筋から戦いになって最後は9筋まで影響する、劇的な展開でした。終局後の感想戦では▲9九飛の変化もやっていました」

 地下鉄飛車に対抗し、渡辺が中央から仕掛けて戦線拡大。ところが3筋から逃走した渡辺王は、地下鉄飛車が稼働するはずだった9筋の攻防で仕留められた。藤井の遠望がどの局面から始まっていたのか興味は尽きない。

 さらには藤井陣の構えだ。29手目▲8六歩と渡辺飛車が直射する歩を突き出した。居飛車党にとって9枚中、最も動かしづらい歩を活用し生まれた8七の空間へ進めた金が藤井王を守護した。銀冠と金銀真逆の構えに「渡辺さんも迫り方が難しかったと思う」。そして岐路として挙げたのが117手目▲9三歩(第1図)への応接だった。

 実戦は△8三王▲8一金△2九角成のときに、▲8四飛△同角▲同歩△同王▲6二角で即詰みに討ち取られた。▲9三歩に「△同王で勝負してほしかった」という。

 ▲9三歩△同王に▲9六香。△5六角成▲9五香△9四歩に▲4八角か▲3九角の遠見の角が△5七銀▲6九王△6八金の詰めろも防ぐ王手だが、まだ難解だった。

 「渡辺さんもいい内容だっただけに集中力が切れたのはもったいなかった。1日8時間以上考えて2日制。エアポケットに入ることはあります」

 第4局にして決着の可能性が生まれた。

 3冠VS4冠、史上初の豪華対決。7番勝負中、唯一の首都圏開催ではコロナ下で取材規制が敷かれるとはいえ、藤井が王手をかけるとあって注目度は当然高い。その対局環境に対し、渡辺が「反発心をもってやれるかどうか」だという。

 引き合いに出すのは自身の95、96年。2度の王将戦7番勝負は共に羽生善治6冠を挑戦者に迎え、1度は当時の全7冠制覇を阻止したが、2度目は屈した。千日手指し直しを挟む4勝3敗の最終局決着だった95年に対し、96年はストレートで敗退。「(96年に)3連敗した後、1局でも2局でも返せていたら、将棋界へ注目が集まる時間を延ばすことができた。それが果たせなかった」。自らの悔恨と渡辺を重ね合わせる。

 6日の棋王戦第1局。渡辺は7番勝負3連敗を含む年明け以降5連敗の流れを断ち、2月6日にして今年初白星を挙げた。流れは変えられるのか。

 2強の一角としての使命感。そうとも言い換えられそうな「反発心」を渡辺に求めていた。(構成・筒崎 嘉一)

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