藤井竜王 5冠に王手 「失敗した」のに強すぎ3連勝 王将奪取率100%

[ 2022年1月31日 05:30 ]

第71期ALSOK杯王将戦第3局第2日 ( 2022年1月30日    栃木県大田原市・ホテル花月 )

唐辛子の生産量日本一の大田原市で勝利した藤井竜王(撮影・西尾大助、会津智海)
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 藤井聡太竜王(19)=王位、叡王、棋聖含む4冠=が渡辺明王将(37)=名人、棋王含む3冠=に135手で勝利し、3連勝で奪取へ王手をかけた。開幕からストレートで王手をかけた7番勝負初出場棋士は1985年度の中村修九段以来2人目。2月11、12日、東京都立川市「SORANO HOTEL」での第4局で、19歳6カ月の史上最年少王将と5冠を目指す。  動画で見る・第71期ALSOK杯王将戦七番勝負第3局ダイジェスト

 王将と5冠の史上最年少記録へダブル王手をかけた。終局後、藤井が告白したのは、対局中の後悔だった。

 「封じ手のあたりは失敗したと思った。その後、どう勝負していくかという局面が続きました」

 対局場で繰り返した「この手に何分使いましたか?」。劣勢への意識から、記録係の斉藤優希三段(25)へ消費時間を尋ねた。午前中、気づいたという。「読み筋に誤算があった。こちらの王が薄い。しのいで反撃に出られるように頑張りたい」と自らの変調を告白していた。

 先手で相掛かりを指せば過去18勝2敗。王位戦に叡王戦、竜王戦。昨夏以降、豊島将之九段(31)とのトリプルタイトル戦3連勝の原動力となった十八番を第1局に続いて採用した。

 1日目に藤井が目指した「地下鉄飛車」。線路を掘り開通させたが発車はせず。それでも3筋から9筋まで逃走した渡辺王へとどめを刺すスイーパーとして待機した。渡辺に角を打たせ、さらに取る。その2手の間に、寄せの網を絞っていった。

 あと1勝で1993年王位戦での羽生善治九段以来29年ぶり4人目の5冠。そして、中村の王将奪取23歳4カ月を4年近く更新する。同時に、71期の王将戦史上2人目、開幕からストレートで奪取へ王手をかけた初出場棋士になった。

 「名局ですよ。1局目も興奮しましたが今回は現場で見ている。密度が濃い」。副立会人の戸辺誠七段(35)が興奮を隠せない。ハイライトに挙げたのが101手目▲5四銀引成(第1図)。「一見、重い攻めです。(5二銀が)浮いちゃうのでエアポケット。逆モーションなので読みから外れます」。第一感は▲5四銀直。駒が前へ出て自然な攻めだ。ところが7三角の利きが通るため、藤井王の逃走路が遮られる。

 107手目、盤上にあらわれたように、奪った桂を6四へ打ち、王手金取りをかけるとともに7三角の利きを遮った。盤面中央の制空権を支配できたのは、小学6年から大人に交じって5連覇した詰将棋解答選手権が示す終盤力。史上初3冠VS4冠の頂上決戦にまたも決め手が生きた。

 「内容的には課題が多い。次の対局で反省を生かせるようにしたい」。王将戦史上、開幕3連勝した棋士18人は全員7番勝負を制した。栄冠はもう目の前にある。

 《唐辛子ですね》藤井は終局後、勝利の記念に本物の唐辛子で装飾を施された弓を手に撮影した。弓は平安時代の伝説の名手で当地出身の武将那須与一にちなみ、唐辛子は開催場所、大田原市が生産量日本一を誇る名産品。藤井は弓を見るなり「あ、唐辛子ですね」と笑顔。簡単そうに見えるポーズも実は体勢的に苦しいのだが、明るい表情でこなしてくれた。

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