理論武装の末

[ 2018年4月8日 08:11 ]

 【我満晴朗のこう見えても新人類】羽生善治竜王か、藤井聡太六段か。

 この1カ月、柄にもなく考えまくった。例の「将棋大賞」で、2017年度の最優秀棋士に誰を推すか。選考会は4月2日。それまでに推薦棋士及び推薦理由を構築しなければならない。とにかく悩んだ。「君たちはどう生きるか」のコペル君並みに。

 結論から明かすと、筆者は最終的に羽生へ「1票」を投じた(実際は挙手によるものだったが)。竜王、棋聖の2冠を保持しているのが最大の理由だ。昨年度の7タイトル中、複数のタイトルを手にしているのは羽生しかいないから。

 一方で、その第一人者を初対決ながら一蹴した藤井にも心はなびいていた。デビュー以来の29連勝に加え、佐藤天彦名人、羽生竜王を連破しての朝日杯獲得は鮮烈過ぎる。なによりも将棋ファン以外を巻き込んだインパクトの強さは羽生を上回っていると言ってもいいだろう。

 成績では羽生。衝撃度なら藤井。究極の2択だ。ううっ。いったいどちらの手を指せばいいのやら。

 ここで筆者はハタとひざを打った。2人同時受賞ってのはいかがだろうか?

 参考にさせてもらった事例がある。メジャーリーグの2001年ワールドシリーズだ。ダイヤモンドバックスVSヤンキース。球史に残る激闘を繰り広げ、3勝3敗で迎えた最終第7戦、逆転サヨナラ勝ちしたDバックスが初の世界一に輝いた名シリーズだ。この時のMVPはランディ・ジョンソンとカート・シリングの両投手。ジョンソンは先発2試合、救援1試合で計3勝を挙げ、シリングは3試合で先発し防御率1・69と安定した数字を残している。この2人の奮闘抜きに優勝はあり得なかったという判断で、異例の2人MVPとなった。

 そうだ。これだ。羽生&藤井同時受賞なら、多くのファンが納得してくれるのではないか。

 と、われながらナイスなアイデアを同業他社の大先輩に披露したのは選考会の1週間ほど前。「え?それはさすがに無理では」とあっさり却下された。実は選考会でもさりげなく提案したのだが、検討の余地全くなく、こちらも却下。

 結局「2度指し」なんだよな…。将棋なら即、反則負け。いろいろ思い案じた割には悪手しか浮かばない。他に妙手はなかったものかと1人ぼっちの感想戦はまだ続いている。(専門委員)

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2018年4月8日のニュース