羽生永世7冠の“引き立て役”になった渡辺棋王 困難の一つは同世代の好敵手不在

[ 2017年12月10日 10:30 ]

渡辺明棋王
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 将棋の羽生善治竜王(47)が今月4、5日の竜王戦第5局に勝ってシリーズを制し、前人未踏の永世7冠を達成した。すっかり引き立て役に回ったのが敗れた渡辺明棋王(33)。翌日にはブログで対局を振り返り「肩にカメラが乗るというのはああいう感じなんですね」と書き込んだ。対局直後にカメラマンが羽生の表情を撮影するため、一斉に渡辺の背後に回り浴びせたフラッシュの砲列を振り返った表現が、ファンの間で話題となっている。

 渡辺は若くしてすでに歴代5位タイのタイトル通算19期を誇り、竜王と棋王の永世資格を持つ最強棋士。だが今年度はその強さが鳴りをひそめており、ここまで13勝18敗と黒星が大きく先行している。竜王戦第5局でも終了後に「(2日制の)1日目で勝負は決まっていた」ともらすほど、今年度はうまくいかないようだ。

 不調の原因を探ることは難しいが、渡辺にとって困難の一つに、同世代に好敵手がいないことが挙げられる。将棋のタイトル獲得経験者を年齢順に並べると、1984年生まれの渡辺の下は、87年生まれの広瀬章人八段(30=元王位)。渡辺の上は8年もブランクを挟み、75年生まれの久保利明王将(42)になる。本来目標となるべきすぐ上の世代が壁となれていないことは、今思えば渡辺にとっての不幸なのかもしれない。

 合理的な考え方や一見ぶっきらぼうな表情からともすればヒールのように見られがちだが、めぐみ夫人の描く漫画「将棋の渡辺くん」に登場する主人公は強さも弱さも併せ持つ、ごく普通の感覚を持つ若者だ。若い棋士が台頭してきた今、タイトル保持者には失礼な表現と承知ながら、あえて“復活”を待ちたい。(記者コラム)

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2017年12月10日のニュース