「右」余曲折な話

[ 2017年2月23日 08:00 ]

WRC第2戦で優勝したトヨタのヤリマッティ・ラトバラ(右)とミカ・アンティッラペア
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 【我満晴朗のこう見えても新人類】世界ラリー選手権(WRC)の今季第2戦(スウェーデン)でトヨタが優勝した。興味のない人にとっては雑報以上の何物でもないけど、業界的にはいい意味での衝撃ニュース。なにしろトヨタは今季、18年ぶりに復帰したばかりなのだから。初戦のモンテカルロで2位に入ったのも驚異的だったが、まさか復帰2戦目で勝利を手にするなんて!

 モータースポーツの取材歴だけは無駄に長いのに、WRCはたった1度しかカバーしてない。12年前のラリー・ジャパン。舞台は北海道・十勝地方だった。レンタカーを駆ってスペシャルステージ(SS=タイム計測区間)を渡り歩くのが仕事のスタイル。SSは3日間で20以上も設定されているので、見るだけでも結構忙しい。

 あるSS区間を取材して、次のコースへと移動していた際のこと。右折予定の交差点で信号待ちをしていると、ラリーの参加車両が左車線に2台、3台と並んできた。アイドリング中のエンジン音がすごい迫力。ん?彼らは直進なのか?ここでは右折するのが順路なんだけど。もしかしたらまっすぐ進む方が早いのか?

 さすがはプロのラリードライバー。やはり一般人とはレベルが違う…と妙に感心している間に信号は青に変わった。すると彼らは爆音を響かせながら一気に右折するではないか。直進車も対向車もなかったので危険ではないものの、実に大胆なドライブだ。さすがは一流のプロ…と口をあんぐり開けながら一緒に右折したことを覚えている。

 後で真相を知った。実はこの曲がり方、欧州ではよくあるとのこと。ロータリーが多いためか、通常の交差点でも(左側通行の場合)右折車はいったん左側レーンに入って待機する場合が多い。自転車や原付の2段階右折と同じ理屈だ。ほとんどのラリードライバーは欧州出身。日本の交差点もこのルールを採用していると勘違いしていたらしい。

 翌日、プレスルームにはこんな張り紙が掲示されていた。「一般道では日本の交通法規を順守してください」。全く人騒がせな。感心したのはなんだったんだ。いや、なんの根拠もなく感心していた自分が恥ずかしい。

 そうそう、トヨタの話だった。18年のブランクをものともしなかった今回の快挙は称賛に値する。この勢いで6月のルマン24時間レースも初優勝、ってのはどうだろう。あっ、こちらはWRCではなくWEC=世界耐久選手権。ちょいと混乱しそう。

 そういえば3月には別のWなんとかC…もある。全く脈絡ないとはいえ、ジャパンの好成績を期待している。(専門委員)

 ◆我満 晴朗(がまん・はるお)1962年、東京都生まれ。ジョン・ボンジョビと同い年。64年東京五輪は全く記憶にない。スポニチでは運動部などで夏冬の五輪競技を中心に広く浅く取材し、現在は文化社会部でレジャー面などを担当。たまに将棋の王将戦にも出没し「何の専門ですか?」と尋ねられて答えに窮する。愛車はジオス・コンパクトプロとピナレロ・クアトロ。

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2017年2月23日のニュース