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【亀田興毅 6・22那須川天心戦への思い(中)】ボクシング界に投じたい一石「ビッグウエーブ起こす」

[ 2019年6月20日 17:30 ]

那須川天心戦への思いを語る亀田興毅氏
Photo By スポニチ

 22日にキックボクシングの“神童”那須川天心(20=TARGET/Cygames)と「AbemaTV3周年記念1000万円シリーズスペシャルマッチ」(後7・00~、AbemaSPECIAL2チャンネル)で対戦するボクシング元世界3階級王者の亀田興毅氏(32)。決戦を目前にスポニチアネックスのインタビューに応じ、那須川戦の先に見据えるボクシング界の未来について熱く語った。

 ――周囲の反対を押し切って決断した那須川戦。その先に考えてることは?

 「もうちょっと大きな規模で考え、ボクシング業界全体が良い意味で変わっていけばいいなと思っています。選手を作っても活躍する場がないと意味がない。興行でも集客をどうするか、みんなに興味を持ってもらうためにどう露出していくか。ボクシングの競技人口を増やすにはどうすればいいかも含めて、考えていく立場でもあると思います」

 ――ボクシング界全体の未来を考えている。

 「ボクシング界は、毎年競技人口が減ってきていて、全国のボクシングジムも軒並みつぶれたり、大手のフィットネスジムに押されて会員も少なくなっていて経営が苦しくなっているという話もよく耳にします。その中で選手が育ってくると自分たちで興行をします。後援会などにチケットを売ったりして、小さい所でも一生懸命に興行をしています。世界タイトルマッチをやるってなると苦しいのでジムの会長の持ち家を担保に入れて、どこからかお金を借りたりして興行をするという話も聞いています」

 ――現状は厳しい。

 「厳しいでしょう。例えばですが、会長が選手に『お前は今回挑戦者だからファイトマネーないわ。ごめんな』と言っても選手は『大丈夫です。ありがとうございます。ファイトマネーがゼロでもジムのために自分は頑張ります』という例もあります。そこだけを聞いたら『ジムのためにひと肌脱いでカッコイイな。会長も走り回って世界戦を組んだんだな』ってなるかもしれないですが、自分は違うと思うんです。プロなんだから稼いでなんぼですよね」

 ――プロボクシングはファイトマネーで稼ぐ世界。

 「アマチュアではないですからね。ハードなトレーニングをして減量をし、戦って打たれるのに稼げなかったら意味ないですよね。メイウェザーを見てみてください。高級時計を自慢しても、みんな『アイツ何やねん』とは思ってないでしょ。『カッコイイ!』『やっぱりメイウェザーは別格だな』って思ってるってことは結局憧れているんですよね。そういうボクシング業界をみんなで力を合わせて作ろうよって話です。何でやらないんだろう?と個人的に思います。ボクシングは魅力的なスポーツだと思っています。正直、メイウェザーは突き抜けてますけど、マニー・パッキャオにしても過去にはオスカー・デラホーヤ、マイク・タイソンなど1試合で20億~30億円を稼ぐ選手たちが実際に出てきています。何十億円というのは難しいにしても、日本でも数億円稼ぐ選手を作ろうと思えば作れるんじゃないかなと勝手ながら思っています。難しい話ではなく真剣にみんなで力を合わせてそういうボクシング業界を作って、日本のボクシング界をもっと大きく、ボクシング自体のブランディングをしていけばいいんじゃないかなと。ボクシングが素晴らしいスポーツってことを世間一般的に響かせたいですよね。ボクシング業界内や格闘技マニアにPRしてるだけではダメだと思います」

 ――もっと広くPRをしていく必要がある。

 「今回の企画がまさにそうだと思います。ボクシングの枠は超えた戦い。ここから次に世間一般の声を集めようとしないとダメで、そこをやっていかないと新規のお客さんは取り込めない。でもボクシング業界には、今回の企画については『ボクシングのルールを名乗ったらいけない』など、批判の声もあります。そこに関しては違うのかなと。そもそもボクシング界をどのようにしていきたいのかというのが見えてこない。今のままだと、K-1や天心選手が出場しているRISEなどに抜かされるんじゃないかなと。お客さんは面白いものにお金を払いますからね」

 ――今回の企画がボクシング界の起爆剤になればいいと。

 「そうですね。こういうものばかりやっていてはダメですけど、これを起爆剤に『ボクシングってカッコいいね』って思う子供たちを増やしたい。自分はそういう気持ちを持って今回の試合に臨みます。ボクシング業界の人たちは賛成してくれているわけではないから、勝手にボクシング代表として戦います。俺もボクシングの世界チャンピオンとして今があるわけだから、ボクシング界に恩返しするために今回は戦います。それで今後、亀田3兄弟や井上尚弥選手みたいになりたいという子供たちが5年後、10年後に出てきた時に、良い業界になっていればいいじゃないですか。もしその時にボクシング業界が潰れていたら、その子どもたちが可哀想です。けど今の日本ボクシング業界の状態だと心配にならざるを得ないですよね」

 ――今の日本ボクシング界は先が見えていると。

 「と言うか、この危機的状況をどれぐらい真剣に深刻に考えているのでしょうか?って思います。だからもっとボクシングが素晴らしいスポーツってことを伝えないといけないと思っています。競技人口をもっと増やさないといけない。だから今回の企画もやっていますし、何で批判されるのかわかりません。『古き良き伝統を守らないとダメなんだ』って声も大事だと思いますが、新しいものを入れないといけない時もあると思います。」

 ――良いものは残しながら、新しいものを入れていく。

 「自分が言いたいのはそこなんですよね。上の人たちが作ってきたモノも凄く大事です。それがなかったら自分たちはご飯を食べれていない。ボクシングの伝統を作ってくれたことは感謝でしかない。でも、そればかりじゃ無理です。上の人たちは例えば、TikTokを知らないんじゃないでしょうか。SNSというのも知っているのかな。それで新しい波に乗れるのかって話です。AbemaTVすらも知らない人がいてると思います(苦笑)。『温故知新』という精神でやっていかないと業界を変えていけない。自分は今回ビッグウエーブを起こすために戦います。それなりのものを見せますよ」

 ――それがもう一度、リングに上がる理由の一つになった。

 「そうですね。今回のように話題になればなるほど『ボクシング』というキーワードが世間に出ますからね。それだけでもボクシング業界にとっては大きなことだと思います。自分は偉そうなことを言っているつもりはないんですけど、亀田興毅という人間にこれだけの人たちが注目してくれて、未だにメディアに取り上げてもらえるわけなので、それなら自分を良い意味でボクシング界の広告塔に使ってもいいんじゃないかなという思いもあります。それを同じ業界で、何で邪魔したり足を引っ張ったりしようとするのかなと疑問に思います。そこに寂しさも感じますよね…。今回に関しても間違ったことをやっているわけでもないですし、ルールを破ったわけでもない。ここには自分の中で正義もあります。だから自分は信じた道を歩んでいきます」(続く)

 ◆亀田 興毅(かめだ・こうき)1986年(昭61)11月17日生まれ、大阪府出身の32歳。2003年12月プロボクサーデビュー。06年8月WBA世界ライトフライ級王者を獲得。09年11月WBC世界フライ級王者を獲得し2階級制覇。10年12月WBA世界バンタム級王者を獲得し3階級制覇を達成。15年10月に現役引退も、18年1月「AbemaTV新春ボクシング祭り!亀田一家人生を賭けた3大勝負」の番組内で現役復帰を宣言。同4月非公式戦ながらポンサクレック・ウォンジョンカムに勝利。同11月に2度目の現役引退。プライベートでは12年3月に結婚。3児の父親でもある。

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