【内田雅也の追球】負担ないように負ける。

[ 2024年5月22日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神2-6広島 ( 2024年5月21日    マツダ )

6回、適時三塁打を放った野間(手前)を見つめる岡田監督(右)
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 阪神監督・岡田彰布は今季開幕前に富士フイルムホールディングス(HD)会長・助野健児と雑誌『日経ビジネス』で対談を行っている。助野は財界人でつくる「阪神猛虎会」で昨年から世話役を務め、岡田とは旧知の間柄だ。組織のマネジメント、リーダーシップ論など語り合った。

 「負け」に関する思考法にも話が及んだ。プロ野球はどんなに強いチームでも年間50試合ほどは負ける。勝負の世界、勝ちはもちろん、負けもまた日常なのだ。

 岡田は「明日に負担がかからないように負けますね」と語っている。「負ける時は絶対に無理はしない。負けるゲームは勝ちにいかない。そんな労力を使う必要がないので。その代わり、分からないように負けます」

 この夜は先発・村上頌樹が序盤でまさかの大量失点を喫した。不調だった。1回裏1点、2回裏1点と失った。それでも最少失点で踏ん張っていた。いつもの村上であれば、試合中に修正してくるところだ。

 ところが3回裏、末包昇大に中越え3ランを浴びた。0―5。相手先発は防御率リーグトップの床田寛樹である。この展開はいわゆる「負けゲーム」だった。

 岡田は「明日に負担がかからないように」戦ったはずだ。投手は村上を5回まで投げさせ、残る3回を富田蓮、岡留英貴の2人だけでまかなった。この救援投手についても岡田は「敗戦処理」という言葉は使わない。「ウチに敗戦処理の投手はいない。明日につながる投手と考えている」

 0―5となってからの打線も淡々と試合を進めているかのようだった。4、5回表はともに併殺打で回を終えた。6、7回表も2死から走者が出ただけだった。

 0―6の8回表、無死満塁の好機に阪神ファンはようやく沸いた。中野拓夢の左前打で1点。森下翔太左犠飛で1点。反撃で床田を降板させた。それまでである。

 この敗戦での心身の負担は軽かっただろう。完敗の2時間44分だった。明日につながる試合だったかどうか。それは誰にもわからない。

 ペナントレースは残りちょうど100試合となった。今季、床田と早くも4度目の投げ合いで敗れた村上は再び巡りくるはずの対戦に備えたい。そしてチームは完敗を引きずらず、きょう22日に臨みたい。 =敬称略= (編集委員)

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