鳥越裕介氏 シートノックは試合でミスをしないための最高の準備の時間

[ 2024年5月14日 06:00 ]

鳥越裕介内野守備走塁コーチ(右)のノックを受けるソフトバンク時代の松田宣浩内野手
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 【鳥越裕介 かぼす論】試合前に両チームが行うシートノック。選手それぞれが守備についてノックを受けるあれだ。皆さんはあの時間をどう、見ているだろうか――。

 現役時代、中日からダイエーに来た当初、私はチームメートにどういう癖があるか、試合前のシートノックで確認していた。速さ、強さ、精度。それを見ていろいろと感じた。

 コーチは「受け手」から「打ち手」になる。普通に打っているようで、実はいろいろと考える。一番、大切にしているのはリズム。選手はその人なりのリズムがある。シーズン中は日々、変化がある。リズムが崩れることもある。それを取り戻す作業。私も選手時代はいい気持ちでゲームに入りたかった。スタメンに抜てきされて出る選手や、前日エラーしてしまった選手には特に、反省の練習はそれまでに終わらせ、シートノックは気持ち良く試合に入っていけるように気を使っていた。

 ただ、待って捕りやすい球を打つのは簡単だ。意識するのは少し油断したり、サボるとバウンドが合わなくなる打球。定位置から少し、前に入ってこられるように打てば自然と足を使える。そこには打ち手と受け手の信頼関係がある。

 近年はコリジョンルールが導入され、内外野からのバックホームはピンポイントの精度が求められるようになった。送球の誤差はグラブ1個分に収めなければ、この世界で飯を食っていけないと思う。失敗すれば何度もやり直させたし、意識させてきた。緊迫した場面で自然とできるようにするためだ。コーチは選手が結果を出してくれれば、やってきたことが証明されたかなと感じる。

 ピンポイントの差。それを意識しているチームとそうでないチームでは差が出てくる。今季、ホークスはその意識が高まっているし、日本ハムには昨年からその意識を感じていた。その2チームがパ・リーグの上位にいる。優勝するチームはそういう部分をおろそかにしていない。

 試合でミスをしないための最高の準備の時間。一度、そういう目でシートノックを見てみてほしい。 (野球解説者)

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