【虎番リポート】本格派の才木が見せた“画期的”投球…変化球が直球の割合上回る異質な完封劇

[ 2024年5月14日 05:15 ]

阪神・才木(撮影・岸 良祐)
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 母の日の快投から一夜明け、甲子園球場での指名練習に参加した才木に「ナイスピッチング」と声をかけると「あざっす~」と、いつも通りの言葉が返ってきた。ただ、前夜のパフォーマンスはいつもとは明らかに違う背番号35にとって“画期的”な投球だった。

 目を引いたのは変化球主体のスタイル。初回、先頭の蝦名にこそ3球連続で直球を投じて右飛に仕留めたものの、以降はフォーク、スライダー、カーブをいつにも増して織り交ぜて凡打を量産した。

 「梅野さんとは“いつも通りいこう”と試合へ向かいましたけど前日(11日)が荒れた試合で、早いうちにまっすぐを狙ってくるところを変化球でカウントを整えていけた。終盤は、相手の頭に変化球がある中で直球で押すこともできた」。11日は8回に自軍の投手が3被弾するなど最大7点差を逆転されていた。“イケイケ”で来るDeNA打線の傾向を、捕手の梅野が読み取って配球を変更。才木も精度高く変化球を投げ込んで応えた。

 「カーブは風もあって抜けたりしましたけど、スライダーは良い曲がりだったし、フォークは初球にゾーンに投げてみたり。空振りも取れたので」

 数字は如実だ。敵地のマウンドで投じた128球中、変化球は71球を数えた。直球の割合は約45%。これが画期的な理由だ。才木が右肘のトミージョン手術から復帰した22年以降の1軍での先発登板33試合で直球の割合が50%を下回ったのは、わずか5度(手術前の17度の先発でも50%以下は1度だけ)。過去4試合0勝3敗で白星が付いたのは今回が初めてだった。才木にとって直球を中心に組み立てていくことがまさに王道。だから、本人にとっても新鮮で異質な完封劇でもあった。

 「あんな投球は今までなかったんじゃないですかね。昨年までは自分は直球とフォーク2種類で“いってまえ”みたいなスタイル。昨日は長所の直球を“おとり”にできたので。こういう投球ができたのはやっぱりデカいですよね。1つの引き出しになるんで」。

 それでも、最速157キロを誇る右腕は大事なことも忘れていない。「スライダーに頼りすぎるのはどうかなと。腕が横振りになるんで直球を良くすることに関してはあまり良くないと思うので」。新境地に足を踏み入れても、本格派の矜持(きょうじ)にブレはなかった。 (遠藤 礼)

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