“死球スルー”の裏に隠された虎バッテリーとG主砲の駆け引き 「ウソをついているのかもしれない」

[ 2024年5月12日 11:00 ]

4日の巨人戦の初回2死、岡本和を空振り三振に仕留めた阪神・西勇
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 あ、今、当たったよね?スロー映像が流れる。やっぱりユニホームをかすっている。しかし、巨人・岡本和は何事もなかったように、打席を続けた。マウンドの阪神・西勇は疑うそぶりも見せない。球審は、よけていないと判断したのかもしれない。

 4日の阪神―巨人(東京ドーム)の初回2死二塁。死球がスルーされる珍しい場面に出くわした。

 いったい何が起きたのか。西勇はあのときと同じ涼しい表情で、種明かしをした。

 「気付いてましたよ。音がしていましたから。でも、チャンスだから、(岡本和)は打ちたかったんじゃない?そういうことはよくありますもん。ましてや僕はシュートピッチャーなので。ああ、打ちたいんやなあって。ただ、それだけです」

 最も近くにいた猛虎の捕手・坂本も当然、異変を分かっていた。

 「試合中、走者で出た時に、(一塁の岡本和に)当たったでしょ?って聞いたら、え、当たってました?って。だから、気付いてなかったみたいですよ。ただ、ウソをついているかもしれないけど」

 岡本和の心境は、阪神担当では取材が及ばないので、ここでは触れない。得点圏で燃えていたのかもしれないし、胸元を突かれて怒ったのかもしれないし、本当に気付いてなかったのかもしれない。

 一つ言えることは、勝負の場面は、心境を明かしたくないほど、駆け引きの火花を散らしていたということ。3球連続内角攻めの3球目に「死球スルー」が起きた。これを境に、バッテリーは外角の変化球勝負に転じる。最後は落ち球で空振り三振。ピンチを脱した。

 記者席から見える岡本和は、この打席以降、精彩を欠いたように感じた。バッテリーが才木―梅野に変わった次の試合も外角の変化球に対応ができていないように映った。4、5日の2試合で8打数無安打に終わった。あの内角攻めが効いたのではないだろうか。

 「それは言えないですよ。(坂本)誠志郎に聞いてくださいよ」

 企業秘密を明かすことはできないという西勇の答えは、プロとして当然。坂本も異口同音。少し、考え方のヒントを示してくれた。

 「(本塁打が出やすい)東京ドームで、岡本という打者を相手して、(外角中心の)偏ったリードをしてしまったらこっちが窮屈になる。(内角に)いける時はいく。リスクはあるけど、飛び込まないと抑えられない。探していた(内角に)いけるタイミングがあそこの場面であり、続けていけたという感じです。次に相手がどう考えるかわからないけど、他の打者と同様に、今回のリードを今後につなげていければと思います」

 よくできたドラマのような伏線回収が既に始まったのか、それともほんの序章にすぎないのか。阪神バッテリーと巨人主砲の心理戦は、シーズンの行方を占いそうだ。(阪神担当・倉世古 洋平)

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