【落合×福本豊対談】世界の盗塁王が語る盗塁の美学 三盗は「簡単。おもしろない」別の理由も

[ 2024年4月29日 17:30 ]

対談後に記念撮影をする落合博満氏(左)と福本豊氏(撮影・大城 有生希)
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 現役時代に3冠王を3度獲得し、監督としては中日を4度のリーグ優勝に導いた落合博満氏(70)が29日、自身のYouTube「落合博満のオレ流チャンネル」を更新。大好評対談企画「博満の部屋」の第7回目として、当時世界記録だったプロ通算1065盗塁を誇る「世界の盗塁王」こと福本豊氏(76)をゲストに招いて対談を行った。

 福本氏が現役時代、よく言われた言葉が「バットを振って力をつけえよ」だったという。これには落合氏も「それは一緒ですね」とうなずいた。福本氏は「昔の先輩はやっぱりええこと言うてたって言ったらおかしいけど、ちゃんと理に適ってるんですよ」とし、落合氏も「野球うまくなるんだったら、野球の中で実践してうまくなれっていうね」と賛同した。

 福本氏は「僕は“盗塁も試合の中で練習せえ”って。(打撃でも)試合で向こうは必死になって放ってくる。それを打ちにいくんだから。試合やけど練習なんやっていう。盗塁のスタート切る練習で、練習はなんぼでもアウトでも気持ちが違う。試合になったらアウトにならない。いいスタートを切りたい。アウトになりたくない。だから、そのまま集中してやるんです。それを試合の中で練習する。それが本当の練習で、それはみんな身についてくる。練習の時の盗塁の練習なんかほとんど死ぬんやもん」と説明。落合氏も「大体、気が入ってないですもんね」と笑った。

 試合の中でスタートを切る感覚は恩師の西本幸雄監督が背中を押してくれたという。福本氏はある日、盗塁のサインが出てスタートを切れなかった際に「フルカウントだったかな。走ってベンチ帰った途端に“何してんだ、おまえ。走れ、言うとるやろ。1球目から言うとるやろ”って怒られた。スタートでビビっちゃって動けんかったんですよ。次の年にキャンプ行った時に“アウトでも何でもええ。ちょっとくらい遅れても行ってまえ”ってやってるうちに場慣れやね、あれは。目で見て反応する癖をつける。それをやっていったら勝手に言うたらおかしいけど、(スタートを)切れるようになった」と実戦で盗塁のスタートを切る感覚を身につけていったことを明かした。

 スタートを切る感覚を身につけると、今度は早いカウントで走ることを求められたという。「これ、やばいなっていう時は(盗塁を)やめるけども、7割くらいやったら行けみたいな感じで。シーズン入ってずっと(プレー)していくと、今度3球目までに走らんかったら怒られて。“2番バッターがポンポンと2ストライク取られたら何もできへんやろ。早よ走ったれ。2番バッターのことも考えて”って言われた。だから僕1球目(のスタートが)めちゃくちゃ多いんですよ」と説明。番組では初球スタートが452企図あり、369個が成功で、成功率.816というデータを紹介。全1364企図のうち、初球が最多の約33%だったという。これには西本監督の方針が影響しているようで「3、4球目にセーフになっても怒られるからね」と苦笑いした。

 落合氏が「三盗は少ないですよね」と振ると、福本氏は「簡単やったもん。おもしろない」とにやり。「ファーストは常にベースについてる。セカンド、サード、ショート下がってるから、もっと(リードで)出られるし、(けん制に)入ってくる雰囲気がある程度あるなとかなんとなしにわかる。キャッチャー、ピッチャーの仕草見て、近いなとかわかるんですけど、(セットポジションに)入った時でリズムが一緒なんです。長く持ったってその人はほっときゃいいし、1、2、3、4とかこういうリズムが一緒になってくる。ピッチャーが忘れてね。あまりにも簡単にできるから嫌やった。1回ツーアウト、セカンドから走ってアウトになった時にめちゃくちゃ(記事に)書かれた。ヒットで還れるのに何で無理して云々。だらだら(書かれた)。(三盗は)それからやめたんですよ。担当の記者にえらい怒られた。書かれたくらいでおまえ何してんねん。行かんかい言うて。担当記者はその時、みんな先輩やからね」と経緯を説明した。福本氏の盗塁数の内訳は二盗が915、三盗が149、本盗が1だった。 

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