選手組合とMLB機構、投手のケガで対立する声明…ESPN記者は協力して事態打開に当たるべきと主張

[ 2024年4月9日 15:31 ]

昨季からMLBで導入された「ピッチクロック」(AP)
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 スポーツ専門局「ESPN」電子版のジェフ・パッサン記者が投手のケガが相次ぐ中、選手組合と大リーグ機構が協力して事態打開に当たれていないと8日(日本時間9日)に叱責している。

 6日(日本時間7日)にこの問題について両者は真っ向から対立する声明を発表した。選手組合は23年に導入されたピッチクロックと、今年改訂された走者が塁上にいるときの2秒短縮に焦点を当て「深刻な変更の影響を認識せず、研究も拒否している。リーグの姿勢は、我々のゲームと選手に対する前例のない脅威だ」と批判した。そして大リーグ機構が指摘する近年の球速の急上昇や、回転効率に重きを置いたトレーニングや、投手が試合で常に目いっぱいの力で投げ続けるアプローチなどについては、一切言及しなかった。

 それに対するMLBの反応も良くなかった。ピッチクロックは試合時間短縮につながり、ロブ・マンフレッドコミッショナーの最大の功績の一つとなったが、それを擁護するためにジョンズ・ホプキンス大学の研究を引用して、「ピッチクロックの導入がケガを増加させた証拠はない」とただただ主張した。しかしながらその研究が具体的に何をどう調査し、どのようなデータを集め、いかに結論づけたかなど、詳しい情報はなく、声明をそのまま信じるには著しく透明性に欠けていた。

 パッサン記者はもっと現場の投手の声を聞くべきだと主張する。痛みを感じているのは投手たちで、肩や肘がいつ壊れるかと危機感を覚えながら投げ続けているからだ。投手がケガをするのは昔からのことだ。しかしながら、近年指摘される要因は、長期間の過度の使用から、短期間のより高強度の使用にあると変わってきた。にもかかわらずチームは、多くの専門家が警告を発する方法で投げるよう促している。それは高強度で投げた方がより良い試合結果につながるからだ。

 とはいえ、大リーグ機構も選手組合の求めに応じてピッチクロックについてもっと調べるべきだ。投手が試合時間短縮の必要性に理解を示しつつも、いやいやながらクロックを受け入れている。腕に不快感があってもタイムアウトを取る権利がない。

 現場の投手はケガのデータについても知っている。近年トミージョン手術の回数が増えているが、マイナーリーグではより顕著で、過去10年間の急増はマイナーレベルでのピッチクロック導入と一致している。一方でトミージョンの増加はピッチデザインの流行とも一致している。テクノロジーを利用することで、握りや腕の振り方を変え、より強度のある直球や変化球を投げられるようになったが、それがその投手の健康を脅かしているのかもしれない。理由の特定は難しい。ピッチクロック、ピッチデザイン、球速の上昇、あるいはすべてなのかもしれない。

 確かなのは投手たちが危機にさらされている中、選手組合と大リーグ機構が政治的な駆け引きをしたり、責任転嫁をしている場合ではないということ。協力して、適切なプロセスを取っていかねばならない。もし今、野球界で最大限の努力を必要とするエリアがあるとすれば、それはこの投手のケガの問題なのである。

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