MLBは30球団すべて指名打者制となり3年目 優秀なDHは大谷、オズナなど一握り、その理由は?

[ 2024年4月8日 07:18 ]

ドジャース・大谷翔平(AP)
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 MLBでは2022年からユニバーサルDHとなったが、優れたDHは多くない。wRC+(weighted RunsCreated plus)は打撃での得点貢献を平均基準で指数化したもので、リーグの平均的な打者を100としており、仮に値が130であればリーグの平均的な打者の1.3倍の貢献を果たしたことを意味する。大谷翔平は22年は142、23年は180。ブレーブスのマルセル・オズナは23年は139だった。

 しかし他のDH打者の成績は目立たない。22年はDHスポットからのリーグ全体のwRC+はわずか101で、リーグ平均より1パーセント良かっただけ。一塁手(111 wRC+)、三塁手(105 wRC+)、右翼手(102 wRC+)、左翼手(106 wRC+)よりも下だった。23年は106 wRC+と数字が上がったが、それでも一塁手よりも下だった。過去2シーズンを合算すると、14チームがDHスポットから平均以下のwRC+だった。レッドソックスの吉田正尚は今季はDH専任だが9試合を終えた時点で90wRC+である。
 ネットサイト「ザ・リンガー」のハンナウ・カイザー記者がその理由を分析している。一番の理由はかつてのデビッド・オルティスのような優れたDHが少ないこと。DHで130試合以上に先発したのは、23年はエンゼルスの大谷と、ブレーブスのオズナ、ナショナルズのジョーイ・メネセスの3人だけ。22年は大谷とレッドソックスのJD・マルティネスだけだった。

 多くの球団がDHに専任の打者を置くのではなく、複数の野手で使い回す。長いシーズンの間には、ケガで守れない選手もいれば、守備で休みを取りたい選手も出てくるからだ。しかしながらこういった半休日のような起用の場合、あまり良い結果は出ていない。例えばマイク・トラウトのDHでの通算成績は打率・207、長打率・344だ。ホセ・アルテューベも打率・270、長打率・350だ。アストロズのヨルダン・アルバレスは優れたDHだが、左翼手の時の方が成績が良い。左翼手だと打率・324、出塁率・413、長打率・653、DHの時は打率・281、出塁率・376、長打率・554である。
 フィリーズのブライス・ハーパーは長年レギュラーの外野手だったが、肘のケガで、22年と23年は主にDHでプレーした。23年はDHでシルバースラッガー賞を獲得するなど、アジャストできたが、当初はうまくいかなかったという。「最初は少しイライラした。守備もプレーしたい、出たいと思っていました」と言う。守らずに打つだけというのは打撃に専念できてよさそうだが、実際にはメンタル面で準備が難しいそうだ。

 パイレーツのベテラン、アンドルー・マカチェンもDHに転向するにあたって、レッドソックスのオルティスの現役時代を知るコーチたちに、彼がどんな準備をしていたか聞き出し、それを参考にルーティンを作り直したそうだ。レッドソックスの計算によると、DHのオルティスは、ほとんどの試合で10分未満しかフィールドに立っていなかった。そのわずか10分の間に、メンタルを高めて集中し、結果を出すことは難しい。その選手に合った独自のルーティンが必要だ。打席の間に室内ケージで何回バットを振るか、ダグアウトでは立っているのか座っているのか、ステーショナリーバイクをこぐのかどうか…。どうすればメンタルにもフィジカルにも一番良い状態で打席に立てるのか?

 23年、DHのwRC+が上位だった4チームは、1人の選手がDHの打席数の55%以上を占めていた。オルティスのような選手がいればどのチームも彼を専任にしたい。しかしながらそういった優れた打者は限られ、もっぱらレギュラー野手の半休日に使われている。

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