オリ・中嶋監督 上田利治監督の「勇者の遺伝子」受け継ぎV3 熱く語りかけたあの試合から好転した

[ 2023年9月21日 05:05 ]

パ・リーグ   オリックス6-2ロッテ ( 2023年9月20日    京セラD )

<オ・ロ>中嶋監督胴上げ(撮影・長久保 豊)
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  オリックスが20日のロッテ戦を6―2で制し、3年連続15度目のリーグ優勝を果たした。14日に一足早くセ・リーグ優勝を決めていた阪神に続いて頂点に立ち、1964年の阪神、南海以来59年ぶりの関西2球団によるセパ制覇を達成した。パ3連覇以上は5連覇した94年西武以来8度目で、球団では4連覇した78年以来3度目。オリックスでは初となった。中嶋聡監督(54)は有観客の本拠地で、5度、宙に舞った。

 ぶっちぎりの独走で頂点に立った。パ・リーグ3連覇は90~94年に5連覇し黄金時代を築いた西武以来。令和の常勝軍団をつくり上げた中嶋監督は3年目で初めて大観衆の本拠地でオリックスの優勝回数と同じ5度、宙を舞った。

 「最高です。何とかここで胴上げしたいと思っていた。本当にうれしい。何とか逆転してくれて選手は凄いなと思った。苦しい戦いばかりだったが、選手が頑張って目の前の試合を勝ってくれた」

 今年も「全員が戦力」と言い続け、相手や選手の調子を見極めながら日替わりベストオーダーを組んだ。その数は130試合で123通り。全員で戦う覚悟は西武との開幕戦のオーダーに表れていた。開幕投手に高卒3年目で1軍初登板の山下を抜てき。育成ドラフト4位の茶野を「8番・右翼」で起用し「1番・遊撃」野口、「9番・左翼」来田も初の開幕スタメンだった。新鮮な顔触れで延長戦を制した。

 一方で2年連続で130試合以上出場の紅林は2軍スタート。21年の本塁打王・杉本も計3度、2軍での再調整を命じた。選手に刺激を与え続けてチームを活性化。抜てきした選手がことごとく結果を出し、主砲・吉田の抜けた穴を感じさせなかった。

 開幕以降、1軍登録された人数は12球団最多の延べ130人。1軍の試合前には自ら2軍戦の中継をくまなくチェックし、目にとまる者は遠征先でもカード途中でも呼んで、すぐに起用した。勤続疲労と故障のリスクを徹底的に排除し、野手で100試合以上の出場は中川圭、頓宮、宗、紅林の4人。投手の50試合以上登板は山崎颯のみで、3日以上の連投は一度もなかった。先発起用の投手16人も12球団最多。選手を育て、守り、そして勝つ、新時代の全員野球をさらに進化させた。

 コーチ陣の風通しの良さも強み。毎試合開かれるコーチ会議では自由に意見を出し合う。時には2軍担当のコーチも出席し、問題があればその日のうちに解決。次の日に持ち越さない。先を見るのは指導者で選手には目の前の試合に集中できる環境を提供し続けた。

 球団では阪急時代の75~78年に4連覇して以来となる快挙。86年ドラフトで「阪急ブレーブス」に入団。4年目までは4連覇時の指揮官でもあった上田利治監督に師事した。88年、阪急としての最終戦では「阪急最後の本塁打」も放った。

 熱く激しい上田監督とは対照的に、冷静でシャイで穏やかなイメージの中嶋監督だが、3連敗を喫し、2位ロッテに2ゲーム差に迫られて迎えた7月29日の日本ハム戦では試合前の円陣で熱い口調でナインを鼓舞した。

 「先の先まで見過ぎるなよ、この試合、この打席、この一球、集中していこう。ベンチにいるやつも、いつ行くか分からんで。全員が全員でやることやっていくぞ。そろそろエンジンかけろよ」

 この試合を制したチームは10試合を8勝2敗の快進撃で独走態勢を固めた。勇者の遺伝子は確かに受け継がれた。

 優勝インタビューでは西武の5連覇への挑戦を問われ「まだまだ強くなれるチーム。とてつもない数字だけど、チャレンジできるチームだと思う」と締めくくった。(中澤 智晴)

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