阪神・村上 師匠に次ぐ2人目の快挙 精密機械の制球と、驚くほど“無欲”な自分へのご褒美

[ 2023年9月9日 06:30 ]

セ・リーグ   阪神4-1広島 ( 2023年9月8日    甲子園 )

<神・広>先制の本塁打を放った森下(左)の頭を撫でる村上(撮影・平嶋 理子)
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 阪神・村上頌樹投手(25)が8日の広島戦で3年目で初の10勝到達を果たした。7回まで二塁を踏ませず8回1死で救援を仰ぐまで1失点の力投。リーグ防御率1位で同2位の床田との投げ合いに完勝した。9月全勝の6連勝に貢献。2位・広島との直接対決に先勝し、18年ぶりリーグ優勝へのマジックナンバーを一気に2減の「10」まで進めた。

 村上が「どうせ、自分なんて…」と鳴尾浜で劣等感にさいなまれた過去2年は、もう昔のことだ。「去年に比べたら想像できない。でも、今年は2桁を目標にやってきたので、自分の中でそこまで驚きはない。自主トレからヤギ(青柳)さんとそういう話をしてきて、今年はやるって決めていた」。覚悟を持って迎えた3年目。ドラフト5位以下で阪神に入団した投手としては師匠・青柳に続く2人目の2桁勝利に到達した。

 「今日はちょっと最初から飛ばしすぎた。チームとして大事な試合だったので、気合が入りすぎた」

 2位・広島との直接対決。差はあっても、この試合の持つ意味合いを熟知していたからこそ、序盤から目いっぱい腕を振った。「アイブラック兄弟(佐藤輝と森下)が2点取ってくれて、投げやすくなった」。無四球でリーグ防御率トップを争う床田との投げ合いに完勝。「バッターはどんなに打っても3割で、7割はアウト。確率を意識して投げている。無駄な四球だと、ただただ一塁にいっちゃう」。救援1度を含む今季20試合で計133回1/3を投げて与四球15。徹底したストライクゾーン勝負の意識が、防御率1・76の秘けつだ。

 開幕から投球の質が変わらないように、グラウンド外での無欲さも不変だ。「マジでご褒美でなんか買ったろうかなと思うけど、欲しいものがなさすぎて…。リュックとか欲しいと思っても、今のが使えるから要らんやってなる。無駄にお金使うより、貯めといた方がいいなって」。唯一考えているのが、いずれ訪れる退寮後の1人暮らしに備えた家具や家電製品のグレードアップだ。

 「ちょっといい家具でも買おうかな、と。冷蔵庫も今までやったら普通のものを買おうかなってのを、グレード1個くらい高いやつ買おうかな…ってぐらいですね」

 そんなオフのささやかな楽しみを胸に秘め、早くも次回を見据えた。「また来週カープなので、しっかり切り替えて。残り試合全部勝ちたいし、10勝したからといって、何も変わらない」。余韻や安どはない。振り返るのは、全てが終わってからと決めている。 (阪井 日向)

【データ】
 ○…20年ドラフト5位の村上(神)が3年目で初の2桁勝利となる10勝目。阪神にドラフト5位以下で入団した投手によるシーズン10勝は、21、22年に13勝した青柳(15年ドラフト5位)に続く2人目。村上は昨季までプロ未勝利。新人を除き、プロ初勝利の年に10勝するのは、08年に10勝した岩田稔(05年希望枠)以来。

《先発登板全戦リードの坂本「全部の球良かった」》
 坂本が、村上の10勝目をアシストした。特に6回1死一塁ではフルカウントから野間を空振りに取り、田中の二盗を阻止する三振併殺。「上位打線につながるところを切れたのは良かった」と振り返った。村上が先発登板した19試合全てで先発マスク。年間通して好リードで支え、節目の白星に到達したことを「どの球でもカウントを取れるし、勝負球にもなる。全部の球が良かった」と称えた。

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