夏の甲子園に見た21世紀枠の意義「甲子園で打てなくても」広がった女子ノッカーの輪 1枠減来春も期待大

[ 2023年8月30日 08:45 ]

<花巻東・宇部鴻城>試合前、シートノックの補助をする宇部鴻城・岡野マネジャー
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 夏の甲子園で春の選抜大会を思う場面があった。宇部鴻城(山口)の岡野美和マネジャー(3年)が試合前ノックに補助員として参加した一幕である。昨夏から認められていた女子部員の練習補助が初めて実現。今春選抜でノッカーを務めた城東(徳島)の永野悠菜マネジャー(3年)に続き、2季連続となる女子部員の練習参加となった。

 今夏は、全国各地で数多くの女子ノッカーが誕生した。甲子園初の女子ノッカーを務めた永野さんの存在と無関係ではないだろう。兵庫大会では川西明峰の藤原祈子さん(3年)が2回戦のノックを担当。「(永野さんのように)甲子園でノックを打つのは難しいかもしれないけど、選抜を見て自分もノッカーとして頑張りたいと思えた」と刺激を受けたことを明かした。

 夏の高校野球を通して、改めて21世紀枠の役割の大きさを思う。21世紀枠として今春選抜に出場した城東は、選手が12人しかいなかった。そのナインを支えるために、野球経験のない永野さんがノックを打ちたいと思い立ち、練習を始めたのだ。困難の克服や文武両道を評価する21世枠がなければ、女子ノッカーの輪がここまで広がることはなかった。

 その21世紀枠は来春から1枠減の2校に削減される。2校となるのは、07年79回大会以来17年ぶりだ。ただし日本高野連は、同枠を軽視したわけではない。出場数が32校に対して特別枠が4校(神宮大会枠1、21世紀枠3)と割合が高いことを理由に、やむなく21世紀枠を減らす決断に至った。2校になる来春以降も、新たな気付きを与えてくれたり、唯一無二の取り組みが報われるような高校に出会えることを願う。

 夏の甲子園は、「エンジョイベースボール」を掲げた慶応(神奈川)が107年ぶりに優勝した。強豪私立が頂点に立つことで新風を吹かせる方法もあれば、進学校が独自の視点で課題解決に取り組み、自分たちの野球を表現する方法もある。高校野球が時代に応じて変化しているのは、高校生が自ら考えて行動に移してきた成果の賜物である。(記者コラム・河合 洋介)

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