大躍進のマリナーズの強さの要因は速球の威力 バーティカルアプローチアングルとは?

[ 2023年8月29日 12:13 ]

エマーソン・ハンコック投手(AP)
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 スポーツイラストレイテッド誌のトム・ベデューチ記者が、ア・リーグ西地区で首位に立ち絶好調のマリナーズの強さが、先発投手陣の投げる4シームや2シームといった速球系にあると分析している。

 メジャー全体のトレンドとしては速球系の使用頻度は減り、投手はより変化球に頼っている。そんな中マリナーズの投手陣は使用率52・4%が全体3位で、被打率・241、長打率・397が両方1位と、うまく速い球で抑えている。速球系が有効な要因はバーティカルアプローチアングルを意識しているからだという。

 メジャーの投手は平均で178センチの高さで直球をリリースしている。これに対しマリナーズの投手は168センチと2番目に低い。ブライアン・ウー投手は150・5センチ、ルイス・カスティーヨ投手は158・5センチ、エマーソン・ハンコック投手は164・6センチといった具合だ。

 一方でその速球がホームプレート上を通過する高さは地面から84・4センチと、メジャー平均の81・4センチより高く、全体で4番目になっている。打者はリリースの位置から、その後の軌道を脳でイメージしバットを振る。低い所から投げられるのに、ボールは高めに伸びてきて、見慣れない軌道ゆえ、バットがボールの下をくぐってしまう。カスティーヨの直球は96・3マイルと速いこともあるが、低い所から高めに伸びてきて打ちにくく、被打率・159だ。ウーは直球が83・8センチ以上の高さを通れば被打率・135である。こういった打者の持つイメージを利用して、高低差で討ち取るのがバーティカルアプローチアングルの考え方だ。

 一方で長身のローガン・ギルバートは長い腕を生かし、投球板から225・5センチホームベース側でボールを放す。メジャー平均の198センチよりかなり手前だ。ジョージ・カービーは三振/四球が10・14とリーグトップで、直球のコントロールが抜群。ブライス・ミラーは4シームの回転率が2601RPMでメジャートップだ。エマーソン・ハンコックは直球をリリースする時の手首の使い方が特種でそれで打者を幻惑する。

 紹介したマリナーズの先発投手たちはカスティーヨを除くと、全員生え抜き。投手の特性を調べてドラフトし、それを生かす育成をし、メジャーの舞台に立たせた。投手出身のジェリー・ディポト編成本部長は素晴らしい仕事をしていると思う。速球が有効だから、ストライク率も初球ストライク率も高くなり、ゆえに高い確率でカウント有利な状況で投げられている。今季のマリナーズの投手陣は防御率3・66、WHIP(投球回あたりの与四球・被安打数合計)1・17、三振/四球が3・68で、それぞれ1位。ア・リーグ西地区を制するだけでなく、ポストシーズンでも勝ち上がり、球団史上初めてワールドシリーズに勝ち進むかもしれない。

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