【甲子園酷暑対策】帝京で聖地51勝・前田一夫氏 クーリングタイム大賛成 気持ち切らさず体休めて

[ 2023年8月16日 05:00 ]

11年、夏の甲子園のベンチで戦況を見つめる帝京・前田名誉監督
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 毎年のように暑さ対策の必要性が叫ばれる高校野球の夏の甲子園大会。今夏は5回終了時に水分補給などを行う10分間の「クーリングタイム」が設けられた。旬の話題に鋭く斬り込む企画「マイ・オピニオン」で歴代5位タイの甲子園通算51勝を誇る帝京の前田三夫名誉監督(74)が、球児たちの未来を見据え持論を語った。

 甲子園は間違いなく暑くなっている。今夏も解説で訪れ、強く感じた。解説席は日陰で比較的風通しもいいが昨年よりも暑く、何より湿度が高い。ただ座っているだけで背中に汗が流れるほどだった。最高気温は連日35度前後。グラウンドレベルの体感温度は、それよりも高いだろう。

 酷暑対策で今夏に導入されたクーリングタイムには大賛成。これだけの暑さの中で、選手の体調を考えれば当然だと思う。重要なのは10分間の使い方で、完全に休ませてはいけない。体温を上げた後に体を動かし、準備してからグラウンドに戻すなど、各監督はいろいろと工夫し、考えていた。

 ポイントとなるのが試合の流れ。時間が空くことで流れが変わることが多い。特に投手は今までのリズムで投げられなくなったりする。監督時代は投手の変化、相手の勢いはどうか、と感じ取るようにしていた。流れが変わる一因に選手の気持ちがある。体を休める間、気持ちを切らしてしまうと高校生はそう簡単に戻せない。逆に緊張したままだと体に変調が起こることもある。うまく気持ちを維持しながら、体を休ませる。これが難しい。私なら大会前からクーリングタイムをどう過ごすか準備して臨む。

 この暑さで夏の甲子園についてさまざまな意見がある。開催時期をずらしたり、ドーム開催など…。もし今以上に気温が上昇し、人体にダメージを与えるような気候になるのなら検討が必要だろう。でも、今や高校野球は「日本の文化」でもある。夏の甲子園は、この時季に、太陽の下で、甲子園でやるからこそ意味があるのではないか、と私は思う。

 監督として最後の夏だった2021年は、東京五輪のため東西東京大会が準決勝から東京ドームで開催された。確かに涼しかったが、私の中には夏の太陽の下でやりたかったという思いがあった。選手の体を大切に、安全性を最優先に考える。それは長年の指導で、ずっと変わらない。これから暑さ対策はより難しくなっていくと思うが、夢の甲子園に選手も指導者も万全を期して臨んでほしい。

 ◇前田 三夫(まえだ・みつお)1949年(昭24)6月6日生まれ、千葉県袖ケ浦市出身の74歳。木更津中央(現木更津総合)では三塁手で、帝京大時代に練習をサポートしていたことから卒業後、72年に帝京の監督に就任した。78年春に甲子園初出場し、89年夏に吉岡雄二投手を擁して全国制覇。92年春、95年夏にも日本一に導いた。歴代5位タイの甲子園監督通算51勝。21年夏限りで監督を退き、名誉監督に就いた。

 ▽クーリングタイム 暑さ対策として各試合の5回終了後に10分間の休憩時間を取る。一、三塁ベンチ裏で氷水や保冷剤などの冷却グッズを用いて体を冷やす。11日には大会本部が「グラウンドに戻る前には軽運動をするよう、試合前とクーリングタイム中に選手に呼びかける運用を追加した」と発表していた。

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