酷暑甲子園「クーリングタイム」全49校体験 現場の声さまざま「6回怖い」「いい切り替え」「着替えは」

[ 2023年8月12日 14:16 ]

<上田西・土浦日大>5回、整備中にクーリングタイムが表示される甲子園球場(撮影・平嶋 理子)
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 甲子園は第7日を迎え、第3試合で九州国際大付(福岡)が大トリ出場。全49校全てが出そろった。

 今大会、特に世間の注目を集めているのが、炎天下での大会運営とその対策だ。

 酷暑での大会開催にネット上では「甲子園中止」「命が危うくなっても続けるのか…」「死人出るまでやめないのか」「ドーム開催もやむを得ない」などと声が上がるなど、暑さにさらされる選手・関係者や観客の健康管理と暑さ対策は近年ますます必要性が高まっている。

 観客や応援団に対しては、2019年に球場と主催者が共同で対策を発表。アルプス席や外野席の通路などにエアコンを増設したほか、各入場門に扇風機計12台を設置、アルプス席の応援団が利用するエリアの床に遮熱塗装、入り口ゲートにはミスト噴霧機を設置した。また、大会期間中は、次の試合のため待機する応援団用としてアルプス席入り口前に日よけテントと扇風機を設置したほか、アルプス席2階に冷房を完備した応援団用休憩所を設けるなどしてきた。

 また、阪神電鉄は7月、甲子園球場のシンボルである「銀傘」を一塁側、三塁側ともアルプススタンドまで拡張する構想を発表した。高校野球開催時の熱中症対策が課題として、07年からの平成の大改修当時からあった拡張プランが球場100周年を機に具体化。“大銀傘”ができれば一日を通して日陰の部分もでき、観戦環境も大きな改善が見込めるとしている。

 一方、グラウンド上の選手に対してもこれまで健康管理のため、「1週間で500球以内」の球数制限、申告敬遠やタイブレーク制の導入が行われてきた。その上で今年からはベンチ入りが20人に増枠されたほか、暑さ対策として今大会から5回終了後に選手が体を冷やし、水分を補給する10分間の「クーリングタイム」が導入された。ベンチ裏に冷風機を置くなどの対応が取られた。

 だが、始まってみると、猛烈な暑さだった第1、第2試合では、担架で運ばれるなど、6回以降に体調不良を訴え交代する選手が相次いだ。

 第2試合で聖光学院・小室は6回1死で、左のふくらはぎと太腿裏がけいれんして降板。「クーリングタイムの時に涼しい場所にいすぎたので、それがちょっと(良くなかった)」と語り、聖光学院・斎藤智也監督も「4人、脚がつった。涼しいところにいて(すぐに)灼熱(しゃくねつ)のマウンド。6回は怖かった」とグラウンドと冷却時間のギャップの難しさを指摘した。

 大会本部は11日、「クーリングタイムは、実践を踏まえながらより効果的な取り組みとすべく努めています。第1日にクーリングタイム終了後に足をつる選手が散見されたことから、クーリングタイムの身体冷却中にも足首の上下運動や膝の屈伸といった関節運動、ストレッチ、グラウンドに戻る前には軽くジャンプしてふくらはぎをほぐすといった軽運動をするよう、試合前とクーリングタイム中に選手に呼びかける運用を追加しました。試合出場している選手9人に対しては、サーモグラフィーで体表温度をチェックし、体表温度が赤く映る選手は身体冷却を中心とし、赤く映らない選手はスポーツドリンクを積極的に飲むよう促すこともしています」と運用しながら、改善を図るとした。

 クーリングタイムについて、現場からの意見はさまざまだ。

 広陵(広島)の中井哲之監督は滞在時間や体への影響を選手やチームで判断する必要性を指摘。「きょうなんか38度ぐらいある。後ろの部屋は27度ぐらいに設定されている。そこにいすぎると、また戻ると体がふわーとしすぎるので。いる時間を考えてとは言っていました」と話した。また自身も首を氷のうで冷却し「熱中症対策で高野連の方に用意していただいたので。氷のひょうのうですね。指導者もしていいいんですか?と聞いたら、ぜひ、どうぞということだったので。僕がやったら、僕よりお年が上の人もできるんだろうなって思って。突破口を切りました」と明かした。

 また、花巻東(岩手)佐々木洋監督は「濡れたユニホームに冷えた風が当たって、そのまま体が冷えている感じがした。小松も6回からボールが落ちた。私自身も足だるく感じました。ただ、休憩の時間がいただけるのは有難い。水分もとれますし」とよく考えながら時間を有効活用すべきと述べた。「何が原因かはわからないですけどね。小松も6回にキレが急に悪くなって、おかしいなと思ったのが6回でしたかね。冷たいユニホームに風が来るのが関係しているのかなと思いましたけど、時間的には本当にありがたいです。着替えも考えないといけないかなと。私の考えで、批判的には捉えてるわけではないんですが、凄い汗もかいているので、そこに風が来るとっていうね。着替えるというのもあっていいのかもしれません」とした。

 市和歌山・半田真一監督は「ありがたいんじゃないですかね。きょうは曇っていたので選手たちも楽に行けたけど、これが炎天下の中で、となったときに…クーリングタイムでは40度くらい体温あったので、必要じゃないかなと。ありがたいです。応援団とかも入れてあげたらいいんですけどね。僕らはベンチとかもあるし結構快適に出来る。スタンドは大変だと思うので」とアルプスを気にかけた。

 智弁学園の高良主将は「あれでしっかりクールもできた。しっかりそれで選手らとも話し合えたのでいい時間でした」と休憩時間として有効活用できた様子。

 10分間にわたる休憩は、ゲームの流れを変えるケースも。近江(滋賀)の多賀章仁監督はナイターで大垣日大と対戦し初戦敗退。それでも、0-4のビハインドから6回に2点を返した。「劣勢の中で気持ちを切り替えて、いいタイムになったと思います。ウチにとっては。4試合目で、ナイターの中での試合でしたから。暑さも選手は負担は少なかったと思う。なお、そういう時間がいい切り替えの時間になったと思います」と述べた。

 一方、試合のスピードアップとの両立をめぐる難しさを指摘したのは智弁学園・小坂将商監督。「いいとは思うんですよ。ただ、1回から5回、6回から9回の時、(グラウンドに)早く出てこいって言うのがあるじゃないですか。水分はちゃん摂らせてあげた方がいいんじゃないかなとは思う。キャッチャーは戻ってきてカップを付けないといけないですし。混乱する部分もあると思う。うちも甲子園経験者がゼロだったので、室内での調整の仕方とかアップの仕方とか。そういうところもしっかりやりたい」と話した。

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