鳥越氏 ミスをした時は「次、次」ではなく、「次こそは」の気持ちでやっていかないと

[ 2023年8月8日 05:00 ]

7月29日のロッテ戦、6回2死二塁で三ゴロの川瀬(右)は一塁ベースを踏まず
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 【コラム 鳥越裕介のかぼす論】放送席からでも声を大にして指摘したい気持ちだった。7月29日のロッテ戦(ペイペイドーム)、3点差を追いかける6回2死二塁。ソフトバンク・川瀬は三塁への強い当たりを放った。相手の好守でアウトとなったが、一塁ベースを駆け抜ける際、彼はベースを踏まなかった。

 同じ大分出身の後輩だ。後日「言いたいことがあるんやけど、聞くか?」と言ったら「お願いします」と向き合ってきた。なぜ、踏まなかったのか?本人も何を言われるかはある程度、分かっていたと思う。完全にアウトのタイミングだったが、もし、あそこで相手がボールを落としていたら、どうだったか。ベースを踏んでいなければアウトはアウトのままだ。そういうところが隙なので、そういうのはやめなさいと伝えた。

 その後、ベンチから守備に行く時にとぼとぼ、出てきたように見えた。守っていても2、3球までは時折、下を向いている。あの時、最高の準備はできていたのか?チャンスで打てなくて、悔しいのは分かる。そんな時こそ、ベンチからダッシュで出て行って、叫んだっていい。足を動かし、口を動かして次の球に備えるのがプロだと思う。

 もう一つ、7月23日のロッテ戦(ZOZOマリン)でのバントの飛び出しもあった。8回無死二塁、川瀬は代走で起用されたが、打者の牧原大がバントを空振りした。空振りした方が悪いのだが、その投球で飛び出し、戻りきれずにアウトになった。彼が二塁へ向かい、最初にしたのは塁審などへのあいさつだった。あの場面、そんなことは不要だ。集中して状況をしっかりと把握し、やることの確認をしなければならない。自分のすべきことをしないと、ああいうことになる。そして後悔する。ああいうのはプロではないと本人に言った。チームにとっても、川瀬というプレーヤーにとってもマイナスになるからだ。

 彼に最後に伝えたのは「おまえは(今宮)健太に勝つ気がないのか?今の健太なら勝てるだろ?」だ。川瀬は真剣に聞いていた。聞く態度、反省した顔を見ると、この選手はできるんじゃないかと思った。それだけ期待値があるから言った。

 こういう選手がもっと高いレベルでやることによって、チーム力は上がる。ベンチにいるだけで満足しているような若手も見かける。ミスをしても「次、次」とよく言うが、その「次」という意味が分かっているのかなと感じる。どんどん、その「次」がなくなっているのが、分かっているのか。「次、次」ではなく「次こそは」の気持ちでやっていかないと。それこそ「次の選手」が出てくる。

 川瀬は「次こそは」の気迫を感じられる選手の一人だと思う。(野球解説者)

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