前橋商サヨナラ スローガン「最強の挑戦者、再び聖地へ」を体現し13年ぶり6度目の甲子園へ

[ 2023年7月28日 06:57 ]

第105回全国高校野球選手権群馬大会決勝   前橋商3-2桐生第一 ( 2023年7月27日    上毛新聞敷島 )

<群馬大会決勝 前橋商・桐生第一>9回、サヨナラ打を放つ前橋商・斎藤(撮影・西海健太郎)
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 第105回全国高校野球選手権大会(8月6日開幕、甲子園)の群馬大会は27日、決勝が行われ、前橋商が桐生第一を9回サヨナラで破り、13年ぶり6度目の出場を決めた。1点を追う9回2死二塁で高橋一輝外野手(2年)が中前へ同点打。なお、2死満塁から斎藤隼外野手(3年)が右前にサヨナラ適時打を放った。今大会6試合のうち、5試合をひっくり返した「逆転の前商」が、甲子園でも旋風を巻き起こす。

 歓喜と絶望の叫びが交錯する中、斎藤隼の放った打球が右前で弾んだ。「どの打席でもインコースに来たので、最後も来るだろうって」。同点の9回2死満塁。極限の状況で冷静な読みを見せたヒーローは、ナインの中心で、もみくちゃにされた。

 「逆転」の前商だ。今大会は準決勝までの5試合中、4試合が逆転勝ち。この日も1点差で9回を迎えたが、誰一人として諦めてはいなかった。9回2死二塁から高橋一輝が中前へ同点タイムリー。さらに庭野涼介(2年)が右前打、金子蒼生(3年)が四球でつなぎ、最後は斎藤が決めた。今大会5度目の逆転勝利。12年から母校の指揮を執る住吉信篤監督は「選手が最後まで諦めずに戦ってくれた。優勝で終われて、本当にホッとしていますし、うれしく思います」と目尻を下げた。

 大会前までは「逆転負け」の前商だった。昨秋3回戦は市太田に8回終了時で6点リードしながら、9回に7失点して敗退。今春準々決勝も前橋育英に7回まで6―3とリードしながら、8回に4点を奪われ敗れた。

 今夏、驚異の粘り強さを生んだ背景には、厳しい練習がある。昨秋、年内最後の練習試合を終え、あまりの貧打を見かねた住吉監督は「俺が見てきた中で、史上最弱打線だ!」と言い放った。そこから目の色を変えたナインは全体練習で800スイングを敢行。自主練習でも時にはマメをつぶし、血を流しながら、さらに200~300スイングを追加した。「人間として成長しなかったら、野球の成長もない」と住吉監督。ゴミを見つければ率先して拾うなど、私生活から見直した真藤允宗主将(3年)は「自分で言うのも、あれですけど、成長したかな」とうなずいた。

 準々決勝で前橋育英を倒した際、住吉監督のもとに、OBの巨人・井上から「本当に勇気が出ました」と激励のメールが届いた。井上の代は19年夏の決勝で同校に敗れ準優勝。その思いも背負い、聖地への切符をつかみ取った。スローガンに掲げた「最強の挑戦者、再び聖地へ」を体現した前橋商。暑くて、熱い、夏の物語の結末はまだ先にある。(花里 雄太)

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